SF映画の古典が描いた戦慄の未来予想図『ソイレント・グリーン』
毎週火曜日に政府が配給する新食材、ソイレント・グリーン。「ソイレント」はSOY(大豆)とLENTIL(レンズ豆)の合成語だが、この不思議な食材に隠されたショッキングな秘密を巡り、スリルとアクションに満ちた緊迫の物語を描くのが、1973年製作の『ソイレント・グリーン』だ。
主演は往年のハリウッドのトップスター、チャールトン・ヘストン。監督は犯罪劇からサスペンス、ホラーにコメディまで幅広いジャンルで活躍した名匠リチャード・フライシャーが務める。
原作は、アメリカのSF作家ハリイ・ハリスンの「人間がいっぱい」。ただし本作はSF=夢あふれる「サイエンス・フィクション」ではなく、暗い予感を突きつける「サイエンス・ファクト」。この原作を踏まえつつ、映画版はオリジナル要素をふんだんに加えて脚色されている。
上級国民の住居を装飾する美しき人間家具“ファーニチャー”や、知識・情報をインプットした“ブック”と呼ばれる知恵者たち(インターネットがなければ、彼らもリアルな存在だろう)、なかでも大自然のパノラマ映像とベートーヴェンの交響曲「田園」の響きに包まれて迎える“人生の臨終”は、一度はスクリーンで体験したい悪夢の瞬間だ。
半世紀を経て突きつけられる「究極の栄養食」の驚くべき真実
2022年、ニューヨークは人口超過密都市となった。人々は仕事も家も失い、電力の配給もマヒ状態。肉や野菜は希少品で、多くの市民は“究極の栄養食”を謳う新たな合成食品ソイレント・グリーンが配給されるのを待ちわびている。
この食品を生産するソイレント社の幹部が殺された事件を追う殺人課の刑事ソーンは、現場となった高級マンションの豪勢な生活に目を見張る。情報に通じた“人間ブック”ことソル・ロス老人の協力で捜査を続けるソーンだったが、ソイレント・グリーンの秘密を知った老人の足は、公営安楽死施設「ホーム」へと向かっていた……。
彼を死に急がせたおぞましい真相とは何か?“ミラクルフード”の正体に勘づいたソーンにも、殺し屋たちの魔手が迫り――。
『ソイレント・グリーン 《デジタル・リマスター版》』は2024年5月17日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次ロードショー