<コメント>
鈴鹿央士(俳優)
映画の物語が過去と現在を行き来して、人物や物語がより濃密に重なり合っていくように感じ、どんどん映画の世界に入り込んでいきました。映画のトーンや色彩、俳優陣のお芝居も素敵で、特に終盤のアクションシーンは呼吸するのを忘れるぐらい圧倒されました。観終わったときに、ニヤけながら深呼吸している自分がいて、すごい映画を観たと実感しました。
玄理(俳優)
世界が戦争で繋がっていた時代。誰が善人で、悪人で、裏切り者なのか。境目の曖昧な音楽とデジャブのように蘇るシーン。一枚一枚、冷たくめくられていく真実に快感を覚える。1945年、ラスト20分—「大事なものは目に見えないようになっている」大好きだった童話の一節を思い出した。
くれい響(映画評論家)
男も惚れてしまうほど、尋常じゃない色気を放つワン・イーボー。さりげなく人差し指でライターのスイッチを押し、煙草を吸う仕草、返り血を浴びたときの残忍な表情、こみ上げてくる感情を抑えるあまり涙する姿など、ファンでなくとも痺れまくること間違いなしだ。終盤に魅せる文字通り体当たりのアクションシーンなど、劇中同様に大先輩であるトニー・レオンの胸を借りつつ、見事なまでに新境地を開拓。エンドロールに流れる同名の主題歌(作詞はチェン・アル監督!)を含め、話題作を彩る二枚看板の役割を十分に果たしたといえるだろう。
よしひろまさみち(映画ライター)
トニー・レオンとワン・イーボー、抑えた表情で心理劇を巧みに演じきった2人の美しさに感服。後半部にある壮絶なアクション肉弾戦は、うっとりできないはずなのに、ついウットリ。このジャンル、そして2人を好きならたまらんノワール。
中井圭(映画解説者)
陰謀蠢く複雑なパズルが揃い明らかになる真実は、目に映るものすら信用できないスパイの世界へと観客を誘う。だが、その複雑さをも支配する、円熟のトニー・レオンから目が離せない。
岩井志麻子(作家)
重厚な映画を鑑賞しただけではなく、とんでもないものを目撃したと思わされた。ずっと息が詰まるような緊張感。そして、エンドロールで私も解放されたと安堵した。
折田千鶴子(映画ライター)
きな臭さが濃厚にたちこめる夜の上海で、危険な香りが似合う男トニー・レオンの色気、それに相反するアクション炸裂の本気っぷり、まさに硬軟の魅力を一時(いちどき)に堪能できる一作。今をときめく若手俳優にドンと胸を貸す男気にさらに惚れた!
えすとえむ(漫画家)
紫煙に撒かれ前後を失うような不安感の中、たどり着いた結末に胸が締め付けられる。
『無名』は5月3日(金・祝)よりヒューマントラストシネマ有楽町、シネマート新宿ほか全国順次公開