撮影監督サム・レヴィが映し出すブルックリンの映像に注目!
タイトルにもある通り、オペラを題材としている本作は、2度のグラミー賞受賞歴を持つブライス・デスナーが手がける劇中のオペラはもちろん、世界的な知名度を誇るシンガーソングライターであるブルース・スプリングスティーンの主題歌「Addicted to Romance」がゴールデングローブ賞歌曲賞にノミネートされるなど、音楽が好評を得ている。しかし本作の魅力は、それに留まらない。本作と同じブルックリンを舞台にした『フランシス・ハ』(2012)や、レベッカ・ミラー監督の前作である『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』(2015)などでキャリアを積んできたサム・レヴィが撮影監督を務め、ポーランドで開催される「エネルガ・カメリマージュ国際映画祭」という、撮影監督と映像芸術を対象とした映画祭にクロージング作品として選出されるなど映像面のクオリティにも抜かりがない。
「エネルガ・カメリマージュ国際映画祭」はまだ日本では認知度が低いものの、映画芸術と撮影監督に特化した世界最大の映画祭であり、過去には『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』がクロージングに選出されたり、クエンティン・タランティーノやアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、が招聘されたりと、映画芸術・撮影技術の発展に貢献し映画界において重要な役割を果たす映画祭だ。
その他にも、サム・レヴィが撮影監督を務めたケリー・ライカート監督『ウェンディ&ルーシー』(2008)がニューヨーク・タイムズ紙で<21世紀のベスト25作品>のひとつに選ばれるなど確かな実績を持つ。さらに、ニューヨークを舞台にした『フランシス・ハ』(2012)、『ミストレス・アメリカ』(2015)ではグレタ・ガーウィグを撮り続け、『レディ・バード』(2017)では監督としてガーウィグと初タッグを組むとアカデミー賞作品賞を含む5部門にノミネートされるほか、ゴールデングローブ賞作品賞を受賞しており、今やハリウッドで最も注目を浴びる監督となったグレタ・ガーウィグとも何度も仕事をし、信頼関係を築きあげていることが見て取れる。
このようにニューヨークを舞台とした作品を数多く手がけ、特に女性監督との実績が目立つ彼だが、本作で描かれるブルックリンの質感から街並みの魅力が存分に表されており、支持を集める理由がよく分かる。リアルなニューヨークの街で撮影された映像にもぜひ注目してほしい。