物語の要となる、千紗子の人生最大の“嘘”
登場人物それぞれの“嘘/かくしごと”がカギとなっている本作より、千紗子が“嘘”をつく本編シーンが解禁となった。事故をきっかけに出会った少年と千紗子のある朝をとらえた本映像。記憶を失った少年に、「なにか、思い出した?」と尋ねるも、少年は暗い表情でうつむいてしまう。そんな少年の頬を包み、「そんな顔しないで」と微笑む千紗子の姿はまるで母親のようだ。そして、千紗子は少年の両手をとり、「あなたのこと、教えてあげる」と切り出し、「あなたは私の子供なの」と“嘘”をつき、「拓未」という名前を教える——。
嘘を伝える瞬間の張り詰めた空気に、千紗子のこの子の母になるという強い覚悟が滲み出る緊迫のワンシーン。この嘘をきっかけに、千紗子・拓未・孝蔵は本当の家族のように暮らしていくことになるが、千紗子の嘘はいつまで通用するのだろうか。そして、千紗子のついた嘘と覚悟、その裏側には過去のある出来事が隠されているのだった……。千紗子と、千紗子を取り巻く人物たちがそれぞれに抱える“かくしごと”とは?
これは葛藤の物語。親子の絆、犯罪、介護、認知症、虐待など多様な要素が複雑に絡むなか、登場人物それぞれが苦悩のうちに葛藤する。
なかでも主演の杏さんはその揺れ動く心を、また、母としての愛と決意を、さらには娘としての想いまで見事に表現し、惹き込まれる。小説と違うラストシーンには、この先千紗子と少年がどういう道を辿るのかと想像力を掻き立てられた。
『嘘』ではなく『かくしごと』の世界は、人がふだん隠している感情が露呈し、罪や愛、怒りや悲しみ、後悔と希望、そしてやさしさがあふれ出す世界だ。
ぼくは何度か涙した。心を温めてくれる涙だった。
(原作・北國浩二)
『かくしごと』は6月7日(金)TOHOシネマズ 日比谷、テアトル新宿ほか全国ロードショー