『バッド・キッズ』はどんなドラマ? イッキ観必至の魅力
毎話のイントロ・アニメーションだけでも、日本のドラマにはないセンスの鋭さが伝わってくる『バッド・キッズ 隠秘之罪』。Prime VideoやU-NEXTで全話観ることができるので、「『ゴールド・ボーイ』公開前に」と、すでに完走した人もいるだろう。まだ未見の人も、1話1時間超で全12話というボリュームだが全く苦痛に感じることはないので、これまで華流エンタメにノータッチだった方も、ぜひ鑑賞してみてほしい。
身寄りのない児童養護施設を抜け出してきた少年・厳良(イェンリャン)と、その妹分である普普(ブーブー)。二人は病気の弟を救いたいという一心で街をさまよい、厳良の幼なじみで母子家庭で暮らす朝陽(チャオヤン)を頼るところから物語が回り始める。近年のサクサク観られる軽めのドラマ作品に慣れていると、本作の1話1時間超は長いと感じるかもしれない。しかし、主人公の少年少女3人とその家族や取り巻く人々をざっと紹介していく第1話こそゆっくりまったり進むものの、偶然“殺害現場”を映してしまってからの展開は本当にアッという間で、終始ドキドキ・ザワザワが止まらない。
しかも『ゴールド・ボーイ』と同様の“メイン事件”のほかにも登場人物全員が振り回される厄介な事故・事件が玉突き的に発生し、深いひっかき傷のようにジクジクとした人間ドラマが子ども目線・大人目線で全12話をかけてじっくり描写されていく。また貧富の格差など登場人物の立場を丁寧に描いていて、事実上の孤児たちやシングルマザー家庭、崩壊新婚カップルらが、ニュートンのゆりかごよろしく各々の狙いに則ってぶつかり合う。
監督は元バンドマン!油断できないスリラー演出と不穏な劇伴
そんな本作の一筋縄ではいかない独特な空気感を担っているのが、ダークサイドの主人公と言える東昇(ドンション)だ。義父母を殺した彼はサスペンス要素を高める存在でありながら、同時に強烈なコメディリリーフでもあるのが驚き。思わず「えっ……!?」と硬直してしまう唐突なパーソナリティ紹介シーンがいくつかあるので、飲み物を吹き出さないよう要注意である(塩顔イケメン俳優チン・ハオのプロ根性に拍手)。
また、規模感までは分からないが静かな田舎町が舞台で、中国南部らしきロケーションがなんとも美しい。80~90年代の台湾映画が好きな人もハマりそうだ(そういえば岡田将生は台湾映画のリメイク『1秒先の彼』[2023年]にも主演している!)。そうしてすっかり感情移入した頃には、ぺたんこの胸板に細長い手足、ランニングに短パン姿の少年たちがキャッキャしあう姿を見るだけで泣けてきて……。
https://www.youtube.com/watch?v=EoKClEHt8vA
ちなみに本作は視聴者の不安を煽る音楽も秀逸なのだが、監督のシン・シュアン(1981年生まれ)は00年代初頭には本格的にバンド活動をしていたというから、巧みな音楽使いにも納得。しかもミニシリーズの次に手掛けた『バッド・キッズ』が初の長編ドラマだというのだから、要注目な才能であることは間違いない。
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とにかく華流ドラマの進化に驚かされるとともに、輸出やリメイクではなくローカライズ、独自映画化という形での日本進出も視野の大きさを感じさせる同シリーズ。『ゴールド・ボーイ』と併せて必見だ。
『ゴールド・ボーイ』は2024年3月8日(金)より全国公開
『バッド・キッズ 隠秘之罪』はAmazon Prime Videoほか配信中
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