トリエ監督「すごくいい仕事をしてくれた」
このたび解禁された本編映像からは、視覚障がいを持つ夫婦の息子ダニエルと、常に彼に寄り添うスヌープの強固な信頼関係が伝わってくる。ダニエルと共に雪山で棒遊びに興じたり、危険な崖を寄り添いながら共に誘導するなど介助犬であると同時に、家族としての絆も感じさせる映像となっている。
過去に<パルム・ドッグ>を受賞したのは、『カールじいさんの空飛ぶ家』(2001年)やヴィム・ヴェンダース監督の『パターソン』(2016年)、クエンティン・タランティーノ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年)など、錚々たる作品に出演した“スター俳優犬”たちだ。
Quentin Tarantino accepted the Palm Dog Award on behalf of 55-pound Sayuri at the 2019 Cannes Film Festival, where “Once Upon a Time in Hollywood” was an official selection. The 3 year old American pit bull terrier played ‘Brandy,’ best friend to Cliff Booth. pic.twitter.com/Chpi6kwftK
— FilmFreeway (@FilmFreeway) March 1, 2020
<パルム・ドッグ>の受賞に関して、「私たちはスヌープと丁寧に向き合ったし、スヌープもすごくいい仕事をしてくれました。最初から準備万端な状態で到着してくれたんです」と称賛するのは、ジュスティーヌ・トリエ監督。しかし、想定外の事態もあったようで……。
ひとつ大きな問題があって、私は『ホワイト・ドッグ』(※人を襲うように調教された犬と調教師の死闘を描く1981年のサスペンス映画)みたいに、カメラが犬のお尻にゆっくりついていって、周りを映していくっていうのをやりたかったんです。でもスヌープはボーダーコリーなので、ゆっくり歩けない犬種で……早くしか歩けなかったんです。だから全然、私の思っていたとおりじゃなくて、すごくスピーディーになりました。
なんとも意外な撮影エピソードを披露するトリエ監督だが、「でもまあ、番犬としての犬の特性だから、それもいいかと思って!」と、スヌープと実際に対峙したことで、即興で演技プランを変更したことも明かしてくれた。
アニマル俳優のケアが徹底されているヨーロッパのエンタメ界
劇中で迫真の演技を見せるスヌープだが、映画製作陣は撮影にあたって動物保護に関する法律を遵守している。フランスとヨーロッパの法制度は、この分野で高度に規制されているので、スヌープは撮影中も常時トレーナーと飼い主に囲まれて、心理的、倫理的に必要なケアを施されていた。またスヌープはストーリーの中心となる重要な役回りであり、クリエイティブ・チームは撮影現場の誰一人としてスヌープを傷つけないよう安全な環境を作ることに細心の注意を払っていたという。
The Coop meets the Snoop.
— NEON (@neonrated) February 12, 2024
Bradley Cooper and ANATOMY OF A FALL’s Messi. 🩵 pic.twitter.com/dCEYPPmXnr
<パルム・ドッグ>は、もともと映画祭の最高賞<パルム・ドール>をもじって作られた賞だが、すでに20年以上の歴史を持ち、犬たちにとって大変名誉ある賞になっている。本作のスヌープは決して脇役ではなく、スリリングなアンサンブル劇を担う一角であり、有名俳優たちも一目置く存在なのだ。
ときには人間の誰よりも冷静に現実を見つめるスヌープの“目線”からは、いったい何が見えているのか? その名演をスクリーンで確かめよう。
『落下の解剖学』は2024年2月23日(金・祝)より全国公開