「心を鷲掴みする99分」学校の“不都合な真実”をえぐり出す、衝撃の問題作『ありふれた教室』

「心を鷲掴みする99分」学校の“不都合な真実”をえぐり出す、衝撃の問題作『ありふれた教室』
『ありふれた教室』© if... Productions/ZDF/arte MMXXII

本年度「アカデミー賞」国際長編映画賞ノミネートを果たしたドイツの新鋭イルケル・チャタク監督最新作『ありふれた教室(原題:Das Lehrerzimmer)』が、5月17日(金)より公開される。このたび、ティザーチラシと特報が解禁となった。

すべてのはじまりは、生徒を守るためだった

“学園もの”の映画について誰もが連想するのは、教師と生徒の心温まる交流を綴った感動作、少年少女の友情や成長を描いた青春ドラマなどだろう。ドイツから新たに届いた『ありふれた教室』は、まさしく現代の中学校を舞台にした学園ものだが、このジャンルのポジティブなイメージを根こそぎ覆す破格の問題作だ。ある新任女性教師の視点で進行する物語は、校内で発生した小さな事件が予想もつかない方向へと激しくうねり、わずか数日間で学校の秩序が崩壊してしまう異常な事態へと突き進んでいく…。

「第73回(2023年)ベルリン国際映画祭」パノラマ部門でワールドプレミアされW受賞を果たしたのを皮切りに、ドイツ映画賞最多5部門(作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞、編集賞)の受賞を達成、米映画レビューサイト「Rotten Tomatoes」では99%FRESHという高得点を獲得しており、世界の映画祭を席巻。さらには、本年度「アカデミー賞」国際長編映画賞ノミネートを果たした本作は、これが日本劇場初公開となるドイツの新鋭イルケル・チャタクの長編4作目にあたる最新作。

正義と狂気がせめぎ合う、衝撃のサスペンス・スリラー

チャタク監督は、教育分野で働くさまざまな人々へのリサーチを行い、自らの子供時代の実体験も織り交ぜてオリジナル脚本を執筆した。誰にとっても馴染み深い学校という場所を“現代社会の縮図”に見立て、正義や真実の曖昧さをサスペンスフルに描ききったその試みは、ミヒャエル・ハネケやアスガー・ファルハディといった名匠の作風を彷彿とさせる。主演のレオニー・ベネシュは、ハネケ監督の代表作『白いリボン』で注目され、『THE SWARM/ザ・スウォーム』『80日間世界一周』などのTVシリーズで活躍する実力派女優。次々と重大な選択や決断を迫られるカーラの葛藤を生々しく体現した本作でドイツ映画賞主演女優賞の受賞を果たし、ヨーロッパ映画賞女優賞にもノミネートされた。

本作が追求した多様なテーマは、教員のなり手不足や過酷な長時間労働、モンスター・ペアレンツなどの問題がしばしば報じられる日本社会とも無縁ではない。教育現場のリアルな現実に根ざし、世界中の学校やあらゆるコミュニティーでいつ暴発しても不思議ではない“今そこにある脅威”を見事にあぶり出す、極限のサスペンス・スリラーが誕生した。

ティザーチラシでは、主人公の若手教師カーラがメインに捉えられ、目元には赤いアザのようなものが見受けられるが表情が全て見えないため、謎めいた不気味さを醸し出している。裏面では人混みのなかカーラが呆然とした表情で佇み、「窃盗」「絶望」「崩壊」等の不穏なキーワードが散りばめられ、両面ともにただならぬ空気が漂うビジュアルとなっている。特報では、ある盗難事件をきっかけにカーラが次第に追い詰められていく様子がうかがえる。生徒や同僚教師との対立、そして教室での叫び声…。学校の“不都合な真実”とは何か。緊迫感漂う音楽も相まって彼女の混乱が垣間見える映像となっている。

『ありふれた教室』は5月17日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、シネ・リーブル池袋ほか全国公開

『ありふれた教室』© if… Productions/ZDF/arte MMXXII

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