アカデミー賞受賞の実力派スタッフが明かす制作秘話
巨匠による伝説の作品をミュージカル映画に仕上げるために製作陣は、俊英ブリッツ・バザウーレ監督を抜擢。また、撮影監督に『シェイプ・オブ・ウォーター』(17)でアカデミー賞ノミネートのダン・ローストセン、美術監督には同じく『シェイプ~』でアカデミー賞受賞のポール・デナム・オースタベリーを起用した。
監督と光について話し合ったと語るのは、撮影監督のローストセン。「照明は光源を一つにし、コントラストが非常に強い照明になっても暗闇を恐れないこと」と、登場人物たちが置かれている状況を光によって表現したという。
そして視覚的トーンに綿密な打合せが行われ、監督は「時代物の多くは“セピア色”をしているが、それは長い年月を経た写真を参考にしている人たちが多いから。私たちは、昔どうだったかを示す“写真”ではなく、“昔どうだったか”ということを参考にすることにしたんです。そのおかげで、色彩や肌のトーンでいろいろと試すことができました」と振り返る。
スピルバーグのオリジナル版ではタイトルの『カラーパープル』を直感的に伝えるために、セリーとシュグが歩く花畑を紫色にすることにこだわった。今回も特に「パープル」の使い方に気を配り、物語の前半では使用を控え、後半にパープルの色彩を高インパクトで映し出している。
「色」で表現するキャラクター像
バザウーレ監督の色彩演出のこだわりについて、「全体的に、この映画のカラーパレットはアースカラーのブラウンやグリーンです。『バーガンディや赤のトーンは、権力や影響力を持った人たちのためにとっておきたい』と監督は言っていました」と明かすのは、美術監督のオースタインだ。
オースタインは主人公セリーの人生を変える歌姫・シュグの登場シーンを例に、「初登場シーンでは、バーガンディ色のコンバーチブルに乗ってきます。そして彼女が酒場に行くシーンのために、衣装デザイナーが素晴らしい赤いドレスと赤い羽根の髪飾りをデザインしました」と解説。ワイン色の車からゴージャスな真紅の衣装へと色彩を重ねることで、華やかさの演出と同時に、セリーに影響を与えるシュグのキャラクターを美しく表現したようだ。
撮影、照明、衣装、色彩設計――名作のミュージカル化を成し遂げた本作の舞台裏には、ブリッツ・バザウーレ監督と精鋭スタッフの徹底したこだわりがあった。これらを踏まえて劇場で鑑賞すれば、より一層深く楽しめるはずだ。
『カラーパープル』は2024年2月9日(金)より全国ロードショー
スティーヴン・スピルバーグ監督作『宇宙戦争(2005年)』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2024年2月放送