人間を一瞬で塵にする火星人の意外な弱点に目がテン『宇宙戦争』
原作であるH・G・ウェルズのSF小説「宇宙戦争」は、1938年にラジオドラマ化された際にアメリカ国民をパニックに陥れたことでよく知られている。「火星人が攻めてきた!」という内容を実況ニュースのように放送したため、本気にしてしまう人が続出したのだ。ネット以前はもとより、戦争が身近だった時代ならではの逸話である。
「宇宙戦争」の最初の映画化は1953年、『地球最后の日』(1951年)などで知られるジョージ・パルの製作、特殊効果畑出身のバイロン・ハスキン監督によるもの。舞台は原作のイングランドからアメリカに変更されたが、驚きの結末だけでなく原作の設定が所々に散りばめられている。
スピルバーグ版『宇宙戦争』の舞台はアメリカ東部。ある日、空が一天にわかにかき曇り、激しい落雷によって割れた地面から異形の宇宙船が襲いかかってくる。行く手にある物すべてを破壊する巨大装置“トライポッド”を操る火星人が、地球に大規模侵攻を仕掛けてきたのだ。レイ(トム・クルーズ)は子どもたちと共に安全な場所への逃避行を試みるが……。
https://www.youtube.com/watch?v=9YB6PXfmU8A
いま氷河期に襲われたら人類は生き残れるか?『デイ・アフター・トゥモロー』
気候学者のジャック(デニス・クエイド)は、地球温暖化により新たな氷河期が到来すると察知。アメリカ政府に早急な対策を取るよう警告するが、副大統領は経済コストを盾に彼の主張をいなしてしまう。やがて南極の氷棚から巨大な氷河が崩落。そこから、世界各地で深刻な異常気象が立て続けに起きてゆく。
「宇宙戦争」からの影響が顕著な『インデペンデンス・デイ 』(1996年)や再評価著しい『GODZILLA』(1998年)で知られる“破壊王”ことローランド・エメリッヒが脚本・監督、若かりしジェイク・ギレンホールが出演したディザスター・パニック。いま観ると“メキシコに密入国するアメリカの難民”という描写の皮肉が凄まじく効いてくる。
90年代だから描けたディザスター×ヒューマンドラマ『ディープ・インパクト』
高校の天文部員が地球に接近する巨大彗星を発見。このままの軌道を進むと、あと1年で地球に衝突してしまう。世界の終末に向けたカウントダウンが始まる中、米国政府は百万人を収容できる巨大シェルターを建設。一方で、彗星を軌道から逸らすべく宇宙飛行士チームが宇宙船で出撃するが……。
サスペンス展開からのディザスターパニック経由ヒューマンドラマ着地で手堅く感動させる秀作。いまNetflix『ドント・ルック・アップ』とあわせて観ると趣が増すが、90年代には堂々と描けていたテーマも2020年代にはブラックコメディとして描くしかない、というウソみたいな現実に暗澹とする。そして、その一因はスピルバーグにもある。
70年代パニック映画ブームの最高傑作『タワーリング・インフェルノ』
サンフランシスコの空にそびえ立つ138階建ての“グラス・タワー”が落成の日を迎えた。世界最高層のビルは祝賀ムードに包まれていたが、その階下で電気系統の故障による火災が発生。広がり始めた火は、最上階に何百人も閉じ込めたままビルを飲み込んで、炎の地獄と化してゆく。
登場人物に直接的な非のない超自然災害モノとは異なり、人間の我欲や傲慢によって雪だるま式に事態が悪化していく、言うなれば人災ディザスター映画。監督は戦争映画の傑作『レマゲン鉄橋』(1969年)のジョン・ギラーミン。スティーヴ・マックィーン、ポール・ニューマン、ウィリアム・ホールデン、フェイ・ダナウェイ、フレッド・アステアら超豪華キャストの共演が堪能できる群像劇でもある。
『宇宙戦争』『デイ・アフター・トゥモロー』『ディープ・インパクト』『タワーリング・インフェルノ』ほかCS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:24時間 パニック・ムービー」で2023年12月放送
https://www.youtube.com/watch?v=VbfVtwnbIrI
『宇宙戦争』『デイ・アフター・トゥモロー』『ディープ・インパクト』『タワーリング・インフェルノ』ほか
CS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:24時間 パニック・ムービー」で2023年12月放送