いま観るべき! 緊急再上映中『ガザ 素顔の日常』
ガザは縦50km・横幅は5~8kmという細長く狭い面積にパレスチナ人約200万人が暮らしている、世界で最も人口密度が高い場所の一つ。多くの人が貧困にあえいでいて、イスラエルが壁で囲み封鎖したため物資は不足し、しかも現在は毎日容赦のない爆撃を受け、まさに風前の灯と言えるだろう。それでもガザには、日常を力強く生きようとする人々がいる。その姿を映し出したドキュメンタリー映画が『ガザ 素顔の日常』だ。
「世界で最も危険な場所」「紛争地」といったイメージを持つ人であれば、この映画で全く違うガザの一面を発見することだろう。穏やかで美しい地中海に面しているガザの気候は温暖で、花やイチゴの名産地。若者たちはサーフィンに興じ、ビーチには老若男女が訪れる。海辺のカフェのとびきりハイテンションな店主に朝会えば、きっと誰もが幸せな一日を過ごせるはずだ。他にも妻が3人、子どもが40人いる漁師のおじいちゃんなど、個性豊かなガザの人々に、きっと魅了されるに違いない。
しかし現実は過酷だ。陸も海も空も自由が奪われたガザは「天井のない監獄」と呼ばれ、住民の約7割が難民で貧困にあえいでいる。それでも日常を力強く生きようとする人々がいる。現実逃避するためにチェロを奏でる19歳のカルマは、海外留学して国際法や政治学を学びたいと考えている。14歳のアフマドの夢は、大きな漁船の船長になり兄弟たちと一緒に漁に出ることだ。
「欲しいのは平和と普通の生活」――ガザの人々は、普通の暮らしを今日も夢見ている。
『ガザ 素顔の日常』はシアター・イメージフォーラムにて緊急再上映中、ほか全国順次公開
僕らはこの海で、自由をつかむ。『ガザ・サーフ・クラブ』
もう一つ、2024年1月13日(土)よりシアター・イメージフォーラム他にて緊急公開されるのが『ガザ・サーフ・クラブ』。普通の人々の暮らしに焦点をあてた『ガザ 素顔の日常』と同じく、ガザの若者たちがサーフィンに興じる様子を捉えたドキュメンタリー映画だ。
イスラエルとエジプトに挟まれたガザ地区は、約200万人の人々が狭い土地に閉じ込められている。経済封鎖が続くガザでは船舶の自由な出入りはなく、入る物資も出ていく物もほとんどない。若い世代は仕事もなく、未来への展望のないまま日々を送っている。
2014年のハマスとイスラエル間の紛争は、イスラエル軍の地上侵攻に発展し、多くの人命が奪われ、多くの建物が破壊された。しかし、このような状況下でも、若い世代は自由を求めて海に繰り出し、サーフィンに興じている。厳しい制裁にもかかわらず、多大な努力の末、約40本のサーフボードがガザに持ち込まれ、ガザ市のサーフ・コミュニティはにわかに盛り上がっているのだ。
海で感じられる刹那の幸せや自由を求めて集う若者たち。彼らの視線の先には自由な世界が広がっているが、果たしてその扉は開くのだろうか――。
『ガザ・サーフ・クラブ』は2024年1月13日(土)よりシアター・イメージフォーラムほか公開