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「養子縁組」を行政の目線も交えて丁寧に描く
――新生児テオの母は出産時、養子縁組に出すことを希望したため、児童福祉サービスがテオを迎えに来る。里親となったジャンは養子縁組が成立するまで、テオの調子を注意深く観察しながら育てることに。
一方、養子縁組機関はテオに一番適した親を候補者から選ぶ手続きを進める。候補者の一人であるアリスは、多くの問題に直面しながらも子どもを迎える準備に取り組んでいた。テオを取り巻く児童保護サービスのメンバーが力を合わせ、ついにテオとアリスの出会いを実現するが――。
まるでドキュメンタリーのようなスタイルと生々しい題材で、“養子縁組”とは何なのか? ということを実感させてくれる本作。子どもたちの未来を請け負う社会福祉事業や里親の舞台裏、養子を迎える家庭に与えられる試練など、その過程がいかに難しいことなのかを描きながら、我が子を手放すことを決意した親への支援の必要性など、我がことなければ知るチャンスのない様々な実態について、丁寧に描いているのが印象的だ。
仏題の『Pupille』には「瞳」という意味のほかに「孤児」という意味もある。それぞれ見事な演技を披露する俳優陣が赤ちゃんを見つめる目、新生児が保育機の中から大人たちを見上げる目……そこから感じられる“何か”が、本作の重要なファクターの一つになっているようにも思う。
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