ダニー&マイケル・フィリッポウ監督が緊急来日!
映画の上映が終わると、会場は大きな拍手に包まれ、ダニー&マイケルが姿を見せると客席から歓声が上がる。ちなみにダニーは、人気漫画「HUNTER×HUNTER」のキャラクターがデザインされたパンツ姿で登場。マイケルも「ゴースト映画って最高だし、中でも日本のゴースト映画って最高ですよね? こうやって日本でみなさんに紹介したいと思って、わざわざ“憑依(降霊術)”をテーマにしたゴースト映画を選びました(笑)」と茶目っ気たっぷりに語るなど、共に日本への愛着を隠そうとしない。
YouTubeチャンネル「RackaRacka」も人気を集めている2人だが、長編映画デビュー作となる本作を作り始めた経緯について、ダニーは「もともと長編映画を作りたいという思いをずっと持っていた。YouTubeはその準備のため、映画スタイルを探す手段としてやっていて、2018年にこれからは映画にフォーカスしようと決めて、脚本を書き始めたんだ。それが『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』になったんです」と説明する。
「ジョーダン・ピールやアリ・アスターなど尊敬する人たちが連絡をくれた」
本作は、「2023年のサンダンス映画祭」で大きな反響を呼んだが、現地の観客の称賛の声に加えて「サンダンスのプレミアの後、ジョーダン・ピールやアリ・アスター、ピーター・ジャクソンにサム・ライミなど、自分たちが尊敬する人たちが連絡をくれて、本当にラッキーだった」とふり返るダニー。マイケルも「すごい人たちから連絡が来て、シュールな気持ちだったし、もったいなすぎるような気分だったよ。アメリカの観客はハッキリと声に出して叫んだり『そこ行っちゃダメ!』とか言ったりするんだ」と楽しそうに述懐する。中には気絶してしまった観客もいたそうで、ダニーは「嬉しすぎて泣いたよ(笑)」という。
ふたりが監督を務めるA24製作の続編も決定しているが、ダニーは「サンダンスでの上映の時にA24の方が来てくれたんだけど、それ以外にも大きなスタジオや配給会社の人たちが来てくれました。その中でもA24の方たちが自分をプレゼンしてくれて、それだけでも夢がかないました。僕たちは『もちろんA24』でお願いしますと。続編は、何も書いてない時点でA24からOKをもらって、本当にラッキーだと思ってる」と語り、マイケルは「サンダンスではあまりにいろんなことが早く起こり過ぎたね。小切手を持って『買うよ』と言い出す人までいたりして、セールスをやってくれてる人が震えながら『これどうするどうする?』って言ってて『“どうする?”じゃなくて、それは君の仕事だろ!』って言ったんだけど(笑)A24の大ファンだったから『すぐに決めようよ』と言いました。彼らの前では『別に…』って顔をしてたけど、実はすごく喜んでました(笑)」と現地で味わった興奮と熱狂を明かした。
観客からは「マクドナルド」のドナルド・マクドナルドや「セサミストリート」のクッキーモンスター、ビッグバードをパロディにしつつ、過激な描写が特徴的なYouTubeチャンネル「RackaRacka」、そして今回の映画において、どのようなことをイメージして、シナリオを描き、撮影を行なっているのか?と創作スタイルに関する質問が。ダニーは「映画もYouTubeも両方とも『自分たちを表現しよう』と考えて作っています。YouTubeはテクニックやいろんなことを学ぼうという気持ちで『今回はエフェクトを試そう』とか『今回はスタントを使ってみよう』とか 、いろいろとトライしているんです。なるべく派手に、カオスな感じで、ものを壊したり、血を流したりして注目を浴びようとしています。逆に映画のほうは、『より深く自分たちを表現したい』と思って作りました」と説明する。さらに、「映画は撮影が本当にタフだったので、編集の方は本当にしんどかったと思います。僕とマイケルと編集の方とで用意した3種類の編集バージョンを見比べて、シーンごとにどれが一番いいかというものを見ながら編集していきました」と明かした。
特に、今回の映画では「ホラーでありつつ、ドラマも見せたいと思ってバランスを考えました」と語るダニー。「最初はもっとバイオレンスだったんだけど、そういうシーンを削除してるんだ」と語り、登場人物のひとりが憑依した“霊”によって苦しめられる痛々しいシーンを例に「映画では15秒しかないけど、本当は2分30秒あったんだ。でも、これはちょっと酷いなと思って…(笑)」と説明し、会場は笑いに包まれていた。マイケルもダニーの言葉を捕捉し「ホラーのためのホラーじゃなく、キャラクターの視点から見て『怖い』と感じる映画を目指したんだ。スプラッターを作りたかったわけじゃないんだ」と映画では、より登場人物たちの“ドラマ”の部分が深く描かれていると語った。
ダニーは以前から、R・L・スタイン(アメリカの小説家)の児童ホラー文学「グースバンプス」に影響を受けたと語っているが、この点について「子どもの頃に読んで、ワクワクしたよ。6歳の時に『自分もR・L・スタインのようになりたいな』と思ったんだ」と語る。さらに、今回の映画を作る上で影響を受けた作品について「ロシア映画の『父、帰る』、それから映画のトーンの部分では『殺人の追憶』、あとは『ぼくのエリ 200歳の少女』にも影響を受けています」と明かした。
本作で、特徴的なキーアイテムとして登場するのが、主人公たちが「#90秒憑依チャレンジ」を行なう際に使う不気味な呪物の「手」。これは、何からインスピレーションを受けたのか?という質問に、ダニーは「最初に書き上げた脚本の初稿では、(霊を呼ぶためのアイテムが)何かをハッキリさせてなかったんです。でも書き終えて読んでみたら、“手”とか“触る”とかコネクションについての描写がたくさん出てきて、このホラーのシンボルになるものは何かと言ったら“手”だと、たどり着いたんだ」と説明。ちなみに、映画に登場するこの「手」にはびっしりと文字が記されているが、ダニーは「手の歴史を表したいと思ったんだ。世界中を回ってきて今回、映画に出てくるティーンたちの手に渡ったので、世界中のいろんな霊や恐ろしいものが書いてあるようにしてあるよ」とのこと。
最後にダニーは観客に向けて、「何を言えばいいかわからないけど、今日は来てくれてありがとう。この映画を楽しんでもらえたら嬉しいです」と挨拶。このコメントにマイケルが「つまんないな~」と噛みつき「僕がダニーにパンチをお見舞いして終わるよ」とダニーに口撃を食らわせるなど、ふたりのコンビネーションが光る和やかな雰囲気の中でトークイベントは幕を下ろした。
『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』は12月22日(金)より丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
A24作品『X エックス』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2023年11月放送