「このミス」大賞受賞の原作者が観た“映画『怪物の木こり』の魅力”とは?
過去には「チーム・バチスタの栄光」や「スマホを落としただけなのに」など、映像化にまで至るベストセラー作を多く輩出している<このミステリーがすごい!>大賞。2002年に宝島社が創設した”ミステリー作家の登竜門”とも言えるこの賞で2019年の第17回、“サイコパス vs 連続殺人鬼”というかつてない設定の超刺激サスペンスとして449作の応募作品の中から堂々の大賞を受賞した小説が、倉井眉介が生み出した小説「怪物の木こり」だ。
倉井は同賞の受賞をきっかけに作家デビューを果たした新人作家ではあるが、同じ年に「あかね町の隣人」という作品でも第64回江戸川乱歩賞の最終候補となるなど昨今最も注目される、まさに新進気鋭の作家のひとり。今年7月には最新作「怪物の町」を刊行し、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いを見せている。
各メディアでも大きく話題となった「怪物の木こり」は、発売されるやいなやSNS上でも大きな反響を呼び、映像化への期待の声も多数寄せられていた。そして今回『悪の教典』『藁の盾 わらのたて』の三池監督がメガホンを取り、亀梨和也を主演に待望の映画化。ひと足早く作品を観た原作者の倉井は、「僕にとって『怪物の木こり』の登場人物たちはみな自分の一部であり、分身のような存在でした。ですが、映画の中の彼らはまるで別人。同じ台詞を口にしているのに、完全に僕から独立した存在のように感じられました」と原作者ならではの視点から見た映画の魅力を語り、「それだけ役者の皆さんがキャラクターを自分のものにしていたということでしょうね。役者さんが演じるとこうも違うものかと驚かされました」と、豪華キャスト陣の演技力の高さに驚愕したようだ。
また、自身も撮影現場を訪れたそうで、「カメラが止まるたびにスタッフの方たちがきびきびと動くので、そこにもとても感心させられました。全員が自分の役割をわかっていないとできないことです。僕ならきっと三日と持たずにクビになっているでしょうね」と現場での三池組のスタッフ陣の洗練された動きに衝撃を受けたと語る。
サイコパスVS連続殺人鬼! かつてない超刺激サスペンスはこうして生まれた
サイコパス弁護士・二宮彰を演じた主演の亀梨和也については、原作よりもより“怖カッコイイ”キャラクターになっていたとしたうえで、「台詞もなく、表情に大きな変化のないシーンでさえも彼の精神状態が伝わってくるのです。それが具体的にどういったシーンなのかはネタバレになるので言えませんが、映画を観れば何のことかはわかると思います。ぜひ劇場で確認してみてください」と絶賛。
本作の“サイコパス監修”を務めた脳科学者の中野信子も、「サイコパスは身近にいれば実に危険で不都合な存在ですが、スクリーンを通してみるとこれほど魅力的に見えるものかというマジックをぜひ体感してください。これは映画の魔力でもありますが、遠くにいて直接的な実害さえなければ、私たちはサイコパスを本能的に支持してしまうのだという、消し去ることのできない人間の業でもあります」と、亀梨和也×三池崇史監督によって映像化されたサイコパス弁護士・二宮の持つ魅力を吐露している。
自身の原作を読んだ上で、映像化した本作をこれから鑑賞する観客へ向けては、「実は原作と映画では結末が違っているのですが、それによって作品そのものの味わいも大きく変わっていると感じました。原作とはまた違ったベクトルで、胸にぐっとくるものがあると思います」と原作ファンも新たな楽しみ方ができる実写映画化になっていると語った倉井。「これではネットに“原作よりもよかった”という感想が溢れそうで心配です(笑)。皆さん、作者を気遣った感想をお願いします」とユーモアも交えながら、その魅力を語った。