推薦者はデル・トロ! 鬼才ウーヴレダル監督に迫る
これまでも映画やドラマ、舞台といったプラットフォームで描かれてきたブラム・ストーカー原作「ドラキュラ」。そのなかでも“最も怖い”と評されている第七章。デメテル号の物語を映画化するにあたっては、「“デメテル”はホラージャンルに属するものの、それ以上のものである」(マイク・メダヴォイ/プロデューサー)、「映画人は常にこの題材に惹かれてきた。航海日誌の謎や、海を渡った運命の船で実際に何が起こったのか、想像をかき立てる何かがある」(ブラッドリー・J・フィッシャー/プロデューサー)というコメント通り、その評判の高さから様々な映画監督が手を挙げてきた。『パンズ・ラビリンス』(2007年)やアカデミー賞監督賞を受賞した『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017年)で知られるギレルモ・デル・トロ監督もその中の一人だ。
デル・トロは本作が持つジャンル性に抑えきれない情熱を持っていたものの、スケジュールの都合で惜しくも断念。そんななか、デル・トロが自身の信頼できる人物として推薦し、晴れて監督に抜擢されたのがアンドレ・ウーヴレダルである。
デル・トロがプロデューサーとして参加した『スケアリーストーリーズ 怖い本』(2019年)で監督を務めたウーヴレダル。スカンジナビアの荒野で熊の密猟を調査する学生たちが、より秘匿な事態が進行中であることを知る様を緊迫感あふれるモキュメンタリータッチで描いた『トロールハンター』(2010年)で高い評価を受け、その後も『ジェーン・ドウの解剖』(2016年)、『スケアリーストーリーズ 怖い本』などを手掛け、ユニークで創意に富んだホラー監督としての評価を確固たるものとした。
「私たちが目指しているのは、シリアスで強烈なホラー映画」
「1922年の『吸血鬼ノスフェラトゥ』からフランシス・フォード・コッポラの『ドラキュラ』(1992年)など、素晴らしい作品の数々と比較されることになり、我々はそのレベルを目指さなければなりません。しかし私たちは、あの壮大でゴシックな物語にしようとしているわけでもない。私たちが目指しているのは、シリアスで強烈なホラー映画なのです」と、これまで映画化された数々の名作にリスペクトを払いながらも野心を覗かせるウーヴレダル監督。
そして本作の脚本を読んだ監督は、デメテル号の乗組員たちが海上に突如現れた謎めく生命体に立ち向かうという強烈なホラー感覚に、リドリー・スコット監督の代表作『エイリアン』(1979年)を思い浮かべたという。
「登場人物すべてに魅了され、本物の乗組員のように感じられた。広大な海にある船上の密室劇が本当に好きで、物語が展開するにつれて謎が深まっていき、乗組員はこの敵に立ち向かっているものの、それが何であるかを全く理解できていないのです」
自らが海上パニックに投げ出されてしまったような“体験型ホラー”の要素を持つ本作の魅力を分析するウーヴレダル監督。その見解を聞き、偶然にも『エイリアン』に関与していたことがあるというプロデューサーのメダヴォイは、「『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』の場合は、船に乗った悪魔がロンドンに渡り新たな生を歩むというもので、『エイリアン』と同様、物語の核心は、その船の中で起こる手に汗握るハプニングにあるのです」と、本作と『エイリアン』の共通点を説明。本作のドラキュラの姿は原作のイメージをより忠実に描いたものとなっており、その得体のしれない不気味さからは“エイリアン”で描かれた地球外生命体の独特のおぞましさに似た恐怖を感じることができる。
これまで「ドラキュラ」を映画化してきた名作へのリスペクトに加え、ホラーパニック映画の傑作『エイリアン』からもインスピレーションを得ながら制作を進めたウーヴレダル監督を、プロデューサーのフィッシャーは「アンドレは全く妥協を許さない。この作品はジャンル映画としては非常に大規模で、彼はただ素晴らしいだけでなく、真の傑作レベルに達するものができるまで、手を引くことも手放すこともしませんでした」と、その情熱の高さを絶賛している。
果たして、長い時を経て愛されてきたクラシック・モンスターの王道“吸血鬼・ドラキュラ”が、鬼才ウーヴレダル監督の手によってどのようにして現代に蘇るのか? その行方を劇場の大きなスクリーンで確かめたい。
『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』は2023年9月8日(金)より全国公開