ストーリ-はオリジナル、主人公は妻! ゲームを食った『バイオハザード』シリーズ
そしてゲーム映画史的にも、W・S・アンダーソンのキャリアにもプライベートにも大きく影響を与えたのが『バイオハザード』で、全6作の人気シリーズになった。『モータル~』以上の大ヒットを全世界で叩き出した『バイオ』は、当初はそれなりにゲーム内容に準拠した内容だったものの、シリーズを追うごとに映画オリジナルストーリーが展開していく。
主人公の視点で、閉鎖空間でのサスペンスを追い求める、そんなホラー的演出を追求していくゲーム版とは真反対の方向、世界を巻き込むゾンビ最終戦争と世界の破滅、その壮大な物語が映画版『バイオ』では展開される。
これには評価が分かれるかもしれないが、実は“「バイオ」と言えばゲーム”という認識自体も昨今は変わりつつある。若年層に対する筆者の個人的なリサーチによると、最近の若者的には「バイオ」と言えばまず思いつくのは映画の方であり、ゲームの方はYouTubeで芸人がワーキャーいいながらプレイしている動画で知っている……なのだそうだ。そう聞くとなかなか隔世の感があるが、ある意味これはアンダーソンの映画がそれだけ普及したということなのだろう。ゾンビ映画といえば『バイオ』、こう思わせたアンダーソンの功績は大きい。
「三銃士」映画もミラが主役!? 愛ゆえのやりたい放題
そして『バイオ』シリーズといえば、主演のミラとアンダーソンのなれそめとなった作品でもある。ミラはもともと世界的なファッションモデルであり、”Plasfic Has Memory”なるバンドで音楽活動もしていた。なので彼女自身はそこまで役者としての活動に重きを置いていなかった。『フィフス・エレメント』(1997年)などで注目されたが、ウクライナ出身の彼女は慣れない国での俳優業に嫌気がさしつつあったという。
しかし、彼女の弟が「バイオ」のゲームの大ファンであり、弟を喜ばせたくて出演を決めたそうである。……と、この辺りからは様々な歴史の「if」を感じずにはいられない。もし彼女が出ていなかったら、後の『モンハン』映画もなかったということになるのではなかろうか。
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意気投合した2人は『バイオ』シリーズ製作中の2009年に結婚。アンダーソンは『三銃士/王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』(2011年)をミラ主演で手がける。え、三銃士に女性主人公はいないよね? という素朴な疑問を持ったものだが、夫妻はそこに驚きの解決法を見せた。原作で様々な陰謀を巡らし銃士たちを翻弄する妖艶な悪女・ミレディを主役級にし、ミラに演じさせたのだ。
この解釈には驚いた。鬼太郎で言えばねずみ男、ドラえもんで言えばスネ夫が主役みたいなものである。これはかなりのコペルニクス的展開であった。もう後はやりたい放題、原作にはない飛行船内でのアクションまで登場する痛快娯楽作品になっていた。そしてなにより、2人の夫婦愛を強く感じさせる出来ではあった。
映画『モンスターハンター』
アルテミス率いる特殊部隊が砂漠を偵察中、突如、強烈な砂嵐に襲われた。隊員たちは一瞬にして嵐に飲み込まれ、アルテミスは激しい突風と稲光の中で気を失ってしまう。気付くとそこは、近代兵器が通用しない巨大モンスターが跋扈する異世界。そしてモンスターの狩猟を生業とするハンターが現れる。
監督・脚本:ポール・W・S・アンダーソン
出演者:ミラ・ジョヴォヴィッチ
トニー・ジャー
ティップ・“T.I”・ハリス
制作年: | 2020 |
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CS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:夏休み!大作・人気作大集合」「特集:24時間 モンスターバトル!」で2023年8月放送