「いざ演じてみたら、ミュージカルに似ていた」
「トランスフォーマー」シリーズといえば、これまでシャイア・ラブーフ、マーク・ウォールバーグといった人間側の主演俳優も、物語を特徴づけてきた。今回のアンソニー・ラモスは、アクション超大作は初めての挑戦となるが、ロボットたちの空前のバトルに巻き込まれつつ、ボナヴェンチュラの言うとおり、観る者を引き込む俳優としてのカリスマ性を発揮している。
そんなアンソニー・ラモスは、主演というプレッシャーを感じていたこと、そして意外にこれまでのキャリアが生かされたことを次のように明かす。
ヒーローものやアクション大作は未知の領域で、しかも夜間の撮影が5週間、ぶっ続けで予定されたりしていたので、まずは体力づくりから始めました。ただ実際にアクションの複雑な動きに挑戦してみると、ミュージカルでダンスナンバーを覚えるプロセスと同じだったんです。
今回は何度もテイクを繰り返すシーンもありましたが、そこもミュージカルに似ていて、踊っているうちに新たなアレンジを加えていくような感覚でこなしました。アクション撮影は自身のスタミナを維持するためにペース配分を考えるわけですが、そこでもミュージカルの舞台での経験が生きたと思っていますよ。
冒頭の舞台になるブルックリンは、アンソニー・ラモスが育った街でもある。今回の物語で戦いのきっかけを作ってしまう、もう一人の重要キャラ、博物館のインターンであるエレーナを演じるドミニク・フィッシュバックもやはりブルックリン育ち。二人は以前から親友だった。ドミニクもすんなり役に入り込めたという。
ほとんど素(す)のままでキャラクターを演じられるのは、俳優として大きなプラスでした。何より、地球の運命がブルックリンにかかっている設定自体にテンションが上がっていました(笑)。ブルックリンに住んでいる人の“地元愛”は特別なんです。
この作品は撮影中、見えない敵と戦ったりして、どんな映像になるか不安もありましたが、完成作を観たら私自身もびっくりで、ブルックリンに誇れる映画になったと感動しました。
ブルックリン以外にも、『トランスフォーマー/ビースト覚醒』には、“天空都市”と呼ばれるペルーの世界遺産、マチュピチュ遺跡や、その周辺でロケを敢行した大バトルなど、シリーズファンも目を疑うシーンが詰まっている。スティーヴン・ケイプル・Jr監督も「険しいジャングルで重い機材を移動し、マチュピチュに到達する頃には、みんなが高山病で苦しんでいました。天候も急変し、2メートル先の人すら見えない状況での撮影はとにかく過酷」と語っているように、VFXだけではない、アナログの努力が積み重なっていることを、ぜひ本作で実感してほしい。
取材・文:斉藤博昭
『トランスフォーマー/ビースト覚醒』は2023年8月4日(金)より全国公開
『バンブルビー』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2023年8~9月放送