「トランスフォーマーの世界を知り尽くしている自負があった」
監督を務めたのは、これが長編3作目となるスティーヴン・ケイプル・Jr。前作は、やはり人気シリーズの『クリード 炎の宿敵』(2018年)。現在のハリウッドで、急速にその存在感を高めている才能と言える。今回、監督を任されたのは、「トランスフォーマー」シリーズへの並々ならぬ“愛”が要因だったという。
アニメシリーズや実写映画もすべて観て、大ファンであり、「トランスフォーマー」の世界を知り尽くしている自負がありました。ですからスタジオ側には自分なりのアイデアで積極的にプレゼンしたのです。
当初、『バンブルビー』の続編を打診されたのですが、個人的に続編には乗り気になれず、断ろうとしました。そうしたらコロナのパンデミックが始まってすべてが白紙になり、その後、まったく新しい脚本が完成し、ぜひやりたくなったのです。僕は「ビーストウォーズ」がいちばん好きだったので、最高のチャンスだと興奮しました。
「トランスフォーマー」に対する監督の“自負”は、どんな部分に表れているのか。スティーヴン・ケイプル・Jrは、過去の6作へのリスペクトを胸に刻みつつ、新たな表現に挑んだことを次のように語る。
これまでのシリーズに比べて、ひとつのキャラクターに“寄り添った”映像を心がけました。一発一発のパンチも、映画を観ている人が「うわっ!」とのけぞる臨場感を意識したわけです。『バンブルビー』のトラヴィス・ナイト監督から、感情表現のために「少しだけ目の部分を大きく変更した」と聞き、そこは僕も今回、オプティマスなどに踏襲しました。
難しかったのは、有機体の動物から無機質なロボットにトランスフォームするマクシマル。ラフカットで違和感があったので、その原因を探ったら呼吸をしていないことでした。ロボットなのでもちろん呼吸は不要なのですが、そうすると生命感が伝わらない。結果的にボディのさまざまなパーツから煙や空気が吐き出されるようにしたところ“生きている”感じになったのです。
前作『バンブルビー』のトラヴィス・ナイトの話が出たが、その前の5作を監督したのがマイケル・ベイ。今回も製作に名を連ねているベイは、どのように協力したのか。そこについてはプロデューサーのロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラが次のように説明する。
スティーヴン(・ケイプル・Jr)が大がかりなエフェクト、視覚効果を取り入れるのは初体験だったので、その部分でのアドバイスをマイケルにお願いしました。アクション超大作における“失敗”も彼は熟知しており、その部分もスティーヴンと密なやりとりで伝えてくれました。失敗から学ぶことも映画製作の重要なプロセスですから。
毎回、人間側の主人公の運命もドラマチックに展開する「トランスフォーマー」シリーズ。今回の主人公は、元軍人で電気系統に詳しいノア。NYのブルックリンで難病の弟を支えながら、新たな仕事が見つからず、悪友の誘いで車を盗もうとしたことで、オートボットの面々と出会う。
ノアを演じるのはミュージカル映画『イン・ザ・ハイツ』などで人気上昇中のアンソニー・ラモス。ボナヴェンチュラは彼の起用について「思わず応援したくなる“お兄ちゃん”的な雰囲気と、スクリーンでの存在感の両方を備えているから」と説明する。