音楽の躍動感が増した『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』
2011年の第4作では、アニメーション映画『Mr.インクレディブル』(2004年)や『レミーのおいしいレストラン』(2007年)のブラッド・バードが長編実写映画を初監督。バードはこれらの作品でジアッキーノと仕事をしていたので、本作の音楽も引き続きジアッキーノが担当した。
「生楽器主体のフルオケスコア」という方向性は前作と同じだが、バードの活劇タッチの演出に合わせてドラムスとベースのグルーヴ感が増し、モスクワ、ドバイ、ムンバイなど物語の舞台となる都市のムードが音楽にも反映されるようになった。その結果、前作よりも躍動感に満ちた劇伴に仕上がっている。
音楽の芸術性を高めた『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』
クリストファー・マッカリーが監督を務めた2015年の第5作では、彼の監督作『誘拐犯』(2000年)と『アウトロー』(2012年)でタッグを組んだ作曲家のジョー・クレイマーを起用。「テレビシリーズ放送当時でも演奏可能な音楽」というコンセプトを掲げ、シンセサイザーを使わない“レトロ・シンフォニック”な劇伴を作り上げた。
そしてクレイマーはプッチーニの歌劇「トゥーランドット」のアリア「誰も寝てはならぬ」の旋律を一部の劇伴の中に組み込み、イルサ(レベッカ・ファーガソン)のキャラクターを示唆するという芸術性の高い手法を用いており、彼の音楽をシリーズのベストに挙げるファンも多い。
ちなみにドキュメンタリー映画『すばらしき映画音楽たち』(2016年)の中で、本作のレコーディングの様子を観ることが出来る。
ダークでパーカッシブなサウンドが印象的『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』
2018年の第6作ではマッカリーが再び監督に就任したものの、諸般の事情によりクレイマーは不参加。新たに『ゴースト・イン・ザ・シェル』や『レゴバットマン ザ・ムービー』(共に2017年)のローン・バルフェが音楽担当に指名された。
バルフェは12人のパーカッショニストにボンゴを演奏させ、オーケストラと合唱団を動員したモダンでパーカッシブな劇伴を作曲。『ローグ・ネイション』から音楽の印象がかなり変わったが、それは「前作とは全く違う映像スタイルで撮る」というマッカリーのプランに沿ったものでもあった。
ヨーロッパ各地でレコーディングを敢行『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』
バルフェいわく、彼は3年ほど前から『デッドレコニング PART ONE』の曲を書き始め、途中『トップガン マーヴェリック』の音楽制作の仕事を挟みつつ、ローマ、ウィーン、スイス、ロンドンなどヨーロッパ各地でレコーディングを行ったという。セッションに参加したミュージシャンは555人にも及ぶとのことだが、バルフェは「重要なのはオーケストラの規模ではなく、それをどう使うかだ」と米メディアに語っている。
サウンド的には前作の雰囲気を踏襲した劇伴となっており、より強力になったパーカッションのリズムと、スイスのドラムコー(マーチングアンサンブル)<Top Secret Drum Corps>のキレのある演奏も印象的だ。重厚かつリズミカルな音楽が映像と一体になった時、物語にどのようなスリルと興奮をもたらすのか注目したい。
文:森本康治
『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』は2023年7月21日(金)より全国公開中
『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』
IMFエージェント、イーサン・ハントに課せられた究極のミッション
—全人類を脅かす新兵器が悪の手に渡る前に見つけ出すこと。
しかし、IMF所属前のイーサンの“逃れられない過去”を知る“ある男”が迫るなか、世界各地でイーサンたちは命を懸けた攻防を繰り広げる。
やがて、今回のミッションはどんな犠牲を払っても絶対に達成させなければならないことを知る。
その時、守るのは、ミッションか、それとも仲間か。
イーサンに、史上最大の決断が迫る—
監督:クリストファー・マッカリー
製作:トム・クルーズ クリストファー・マッカリー
音楽;ローン・バルフェ
出演:トム・クルーズ
ヴィング・レイムス サイモン・ペッグ
レベッカ・ファーガソン ヴァネッサ・カービー
ヘイリー・アトウェル ポム・クレメンティエフ
イーサイ・モラレス ヘンリー・ツェーニー
制作年: | 2023 |
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全国公開中