ホイットニー主演&主題歌採用の立役者は共演者コスナーだった
ケヴィン・コスナーは1955年生まれ。長い下積みの後、『再会の時』(1983年)に出演したのがきっかけでカスダンと知り合い(出演場面は本編からカットされたが)、『シルバラード』(1985年)の準主役に抜擢される。同時期に主演した『ファンダンゴ』と合わせて注目されるようになり、以後、次々に主演作が大ヒット。1990年には初監督作『ダンス・ウィズ・ウルブズ』で作品・監督などアカデミー賞7部門を制覇、ハリウッドの頂点に立った。
当時のコスナーには旧友カスダンの忘れられた脚本を取り上げ、映画化するのは簡単なことだったに違いない。しかし、さすがアカデミー賞に輝くプロデューサーだけあって、彼の2つの提言が結果としてこの映画を大ヒットに導くことになった。それは、オリジナルの脚本が主演に想定していたダイアナ・ロスに代わるスーパースター役にホイットニー・ヒューストンを推薦したこと、そして彼女に「オールウェイズ・ラヴ・ユー」の導入部をアカペラで歌わせたこと、である。
『ボディガード』はホイットニーの絶頂期を記録し永遠の命を得た
ホイットニー・ヒューストンは1963年8月9日生まれ。母も歌手、従姉にディオンヌ・ワーウィックがいる音楽一家に生まれる。教会の聖歌隊から自然に歌手の道へ進み、1985年にアルバムデビュー。2曲目のシングル「すべてをあなたに」から、ビートルズを上回る、7曲連続全米シングルチャート1位の記録を打ち立てる。そして『ボディカード』の主題歌「オールウェイズ・ラヴ・ユー」は全米シングルチャートで17週連続1位、全世界で4200万枚を売り上げる彼女の最大のヒット曲となった。
しかし、映画公開の年に歌手のボビー・ブラウンと結婚、翌年一人娘ボビー・クリスティーナ・ブラウンを出産したあたりから、キャリアが低迷を始める。夫のDV、薬物依存などのトラブルが続き、リハビリを経て離婚を成立させ、復活の意欲を見せたが、2012年2月11日、滞在先のビバリーヒルトンホテルで死去。死因は入浴中の心臓発作による溺死とされた。
『ボディガード』のラストで、「オールウェイズ・ラヴ・ユー」を歌うホイットニーのアカペラが聴こえてくると今もゾクゾクする。奇しくも彼女の絶頂期を記録することになった『ボディガード』は、そのことだけで永遠の命を得たと言えるだろう。映画の中の彼女は、いつ見ても若く美しく輝いているのだから。
文:齋藤敦子
『ボディガード』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2023年7月放送
『ボディガード』
世界屈指の実力を持つボディガード、フランクは、歌手兼女優のスーパースター、レイチェルの護衛を依頼される。脅迫状が届くなど、最近、彼女の身辺で不穏な事件が発生しているのだ。始めはフランクを邪魔者と思っていたレイチェルだが、コンサート中、彼に助けられたことから心を開いてゆく。
監督:ミック・ジャクソン
出演:ケヴィン・コスナー ホイットニー・ヒューストン
ビル・コッブス
制作年: | 1992 |
---|
CS映画専門チャンネル ムービープラスで2023年7月放送