審査委員長イニャリトゥが率いるカンヌ育ちの審査員団
今年の審査員も「男4女4、そして審査員長」と去年ケイト・ブランシェットが審査委員長を言った構成と同じ。おそらくこれをスタンダードにすることにしたのだと思う。すると、全体数のまだまだ少ない女優以外の女性映画人のキャスティングに苦労する、のだろうな…。
それはさておき。
司会の隣、左からポーランドの監督パヴェウ・パヴリコフスキ(『COLD WAR あの歌、2つの心』)、21歳史上最年少審査員エル・ファニング、ギリシャの監督ヨルゴス・ランティモス(『女王陛下のお気に入り』)、ブルキナファソの女優兼監督マイモウナ・エヌジャイエ、審査員長アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥはメキシコ人監督、ケリー・レイチャードはアメリカ人のインディ系監督、フランス人漫画家兼監督エンキ・ビラル、イタリア人監督権女優アリーチェ・ロルヴァケル(『幸福なラザロ』)、フランス人監督ロバン・カンピヨ(『BPM ビート・パー・ミニット』)という、いろいろな面でバラエティに富んだ審査員団である。カンヌ映画祭受賞経験者、カンヌ育ちといってもいいメンバーもいる。
イニャリトゥ審査委員長は「審査員や審査をコントロールしようとは思わない。撮影でもスタッフやキャストには自由にやって欲しいと思っているし。人が作り上げた作品をジャッジをするのは好きじゃないんだよね。沢山の作品を見て、みんなで話して。楽しめたらいいと思う」と監督だらけの審査員団を率いての審査方法をイメージする。今年のコンペにはカンヌ映画祭最高賞パルム・ドール受賞者が5人、しかも二回というダルデンヌ兄弟とケン・ローチもいて混戦模様だ。
フランスの”劇画”「バンド・デシネ」作家であるエンキ・ビラルは「僕はフランス語で話させてもらう」と前置きして「映画というものはハイブリッドな文化だと思う。コミックもだが。世界とつながり、人間や現実を理解するきっかけになる。広いトピック、様々な国やその文化に触れられるのが映画であり、映画祭」と期待をにじませる。イニャリトゥが付け加える「前回カンヌに参加した時はVR作品を体験してもらったのだけれど、映画は今世界で起こっている問題に観客が興味を持って考えるきっかけを作ることができるはずだ。これからおこりうる問題を止めることもできるかもしれない。」
エルが子役の頃に出演したイニャリトゥ監督作『バベル』から13年!
そんなイニャリトゥだが、まさかエルと一緒に審査員を務めるとは思わなかったようだ「あのおチビちゃんがねぇ」とニコニコ。当のエルも、レッドカーペットは3回、このひな壇も2回経験済みとはいえ、いささか緊張の面持ち。でも「映画祭のコンペ審査員を引き受けていただけますか、と電話があったときはもうびっくりでショック。小さい頃から仕事してきたけれどまさか、カンヌ映画祭の審査員をするなんて考えもしなかったから。でも、若者の声を代表するってことなんだなと思って興奮してます」と話し始めるといつもの調子で、キュートな笑顔がこぼれる。またまたイニャリトゥ「あのおチビさんがねぇ。こっちが年取るわけだ」に会場(笑)。
親子ほどに歳の違うメンバーで構成された今年の審査員団が、どんな結果をアナウンスするか。映画の国の、映画の大きな家族たちの10日間が始まった。
文:まつかわゆま
カンヌ映画祭スペシャル2019
<日本オフィシャル・ブロードキャスター>CS映画専門チャンネル ムービープラスにて
2019年5月25日(土)カンヌ映画祭授賞式 日本独占生中継ほか、受賞作&関連作計6作品放送