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ラーム・チャラン『ランガスタラム』&NTR Jr.『アラヴィンダとヴィーラ』 深化するテルグ語映画を『RRR』コンビの主演作から知る

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ライター:#安宅直子
ラーム・チャラン『ランガスタラム』&NTR Jr.『アラヴィンダとヴィーラ』 深化するテルグ語映画を『RRR』コンビの主演作から知る
『ランガスタラム』©Mythri Movie Makers
『アラヴィンダとヴィーラ』
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テルグ語映画の転換点となった運命の2014年

こうした非定型的な造りは、1990年代あたりからゆっくり時間をかけて完成された、テルグ語のトップヒーロー主演の<マサラ・アクション>に変化が訪れたことを示しているように思われます。王道娯楽映画の各種の約束ごとを仕分けして、どうしても欠かせないソング・ダンス、コメディとアクションを活かしたまま、時代の変化と折り合いを付けようとするかのようです。

『アラヴィンダとヴィーラ』

逆に言うと、「ヒーローは強くあらねばならない」というお約束は、『ランガスタラム』のリアルな農村世界の描写、『アラヴィンダとヴィーラ』のプログレッシブな問題意識、それぞれとどうしても共存しなければならず、両作の映像作家がかなり知恵を絞り、工夫を凝らした跡がうかがえます。

『ランガスタラム』©Mythri Movie Makers

新しい時代の到来、模索するテルグ語映画

上に述べたような変化、あるいは変化を求める指向性はどこから来たのかと言えば、やはり2014年のテルグ語州の分裂にあると筆者は考えます。植民地時代に英国直轄下だったマドラス管区のテルグ語地域と、ハイダラーバード藩王国のテルグ語地域が一つにまとまってAP州が成立したのが1956年。しかし、旧ハイダラーバード藩王国領だったテランガーナ地方には、この政治的な一本化を喜ばない人々が多く、不満は50年以上にわたってくすぶる政治運動となり、デリーの中央政界の力学とも複雑に絡み合い、2014年の分州が起きたのです。

『アラヴィンダとヴィーラ』

新生テランガーナ州と縮小したAP州とは仲の悪い隣人同士となり、テランガーナ州のハイダラーバードを本拠地としながらも、ルーツはAP州沿海地方にあるテルグ語映画人(テランガーナ地域にルーツのある映画人は極めて限られています)は、「誰に向かって映画を作ればいいのか」という問題に直面することになったのです。

『ランガスタラム』©Mythri Movie Makers

図体が大きく、途方もなく豊かな映画界なので、一夜にして全てが引っくり返ることはありませんでしたが、この問題意識は心ある映画人たちの間に根を下ろし、さまざまな試みがなされるようになってきました。単にスカッとする勧善懲悪以上の、同時代の社会に有用なメッセージをストーリーに盛り込もうとする傾向が生じたのです。

『アラヴィンダとヴィーラ』

ラーム・チャランとNTR Jr.の2000年代の主演作、たとえば『マガディーラ 勇者転生』(2009年)、『ヤマドンガ』(2007年)の曇りのない朗らかな世界と比べると、テルグ語映画が新しい時代の中で模索していることが分かるでしょう。

文:安宅直子

『ランガスタラム』は2023年7月14日(金)より新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル池袋ほか全国公開

『アラヴィンダとヴィーラ』はCS映画専門チャンネル ムービープラス「ハマる!インド映画」で2023年7~8月放送

 

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