田園を舞台にした社会派娯楽映画『ランガスタラム』
ラーム・チャラン主演の『ランガスタラム』は、1980年代のゴーダーヴァリ川沿岸地方が舞台。ずっと見ていたくなる呑気な村の日常と楽しいソング&ダンスが繰り広げられますが、ラーム・チャラン演じる村の若者チッティ・バーブが、大好きな兄とともに村人の借金問題に関わることにより、村の政治の暗部や差別の構造と向き合うことになるという、スリラー要素もある骨太なドラマです。
本作でラーム・チャランが演じるチッティ・バーブというキャラクターは、難聴という障碍を持ち、教育も充分に受けていません。悪党相手の肉弾戦になると滅法強いという以外は、テルグ語娯楽映画にありがちな全能の主人公という属性はありません。その短気と頑なさ、そして無学によって大きな代償を払うことになるのですが、そうした条件下で全力で生きる姿が見る者の心を打ちます。
ファクショニズムと正面から向き合う『アラヴィンダとヴィーラ』
『アラヴィンダとヴィーラ』は、以前『あなたがいてこそ』(2010年)を紹介した際にも触れた、アーンドラ・プラデーシュ州(以下、AP州)内陸部ラーヤラシーマ地方の特異なファクショニズムを正面から扱ったシリアスな一作です。同作とファクショニズムの関係については、以前別のところでも書いています。
本作でのNTR Jr.もまた、無体な攻撃に対して驚異の身体能力を発揮して刺客を返り討ちにするアクションを披露しますが、ストーリーは悪者を成敗して返り血を浴び仁王立ち、という予定調和の大団円とは少し違う展開をします。
ラーヤラシーマ地方のファクション抗争ものは、主演俳優のヒロイズムやマスキュリニティを屹立させ、また過激な流血アクションを楽しみたいタイプの観客に満足を与える、売れ筋のサブジャンルでした。しかし本作は、ヒロイズム礼賛を否定まではしないものの一定の留保をかけ、ファクション抗争を終わらせるための道筋を、主に女性たちとの対話によって模索するのです。