ボイド「スピルバーグの考えた映画に出られるなんて」
―お二人が初めて『インディ・ジョーンズ』を観た時のことを教えてください。
マッツ:1作目の『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981年)が公開された時、ボイドはまだお母さんのお腹の中にいたんですよ!
ボイド:僕の代わりに母が観てくれていたんですよ(笑)。僕は1981年生まれなんです。2作目(『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』[1984年])は父親と一緒にビデオで観たんですが、まるで弾丸の周りを回るような感じで楽しくって、外に出て、棒っきれを掴んでインディの鞭の真似をしたのを覚えています。これぞ映画の素晴らしさですね。もっと映画を見たくなるし、冒険の旅に出たくなる。そして、1作目、2作目、3作目と、30回ずつ見返したくなる。でも、インディ・ジョーンズの映画に出るなんて考えもしなかった。スティーヴン・スピルバーグの考えた映画に出られるなんて、あまりにもシュールすぎるし、今ここにいることさえも、とてもシュールですよ。
マッツ:『インディ』を初めて観たのは、僕が15歳の時。兄と一緒にビデオ屋で5本の映画を借りましたが、2本目に観たのが『失われたアーク』だったんです。もう夢中になって、他に借りた映画は観なかった。ジェームズ・マンゴールド監督も、同世代の俳優も、みんなこれを観て“同じ種族”になったというわけで、それはそれで楽しいですね。
―アクションシーンはとてもインパクトがありますね。
ボイド:モロッコでの撮影はトゥクトゥクを実際に走らせたり、普通の撮影ではこんなに時間をかけられないので、大作であることを実感しました。その後、ロンドンのスタジオに戻り、さらに多くのことを行いました。ロケとは違って、スタジオでは作り込みがすごく、環境をコントロールすることができました。まさに“インディ・ジョーンズ映画”でしたよ。つまり、巨大なジグソーパズルのようなもの。1テイクごとに時間がかかるし、1シーンを撮影するのに丸1日かかるんです。
マッツ:通常の絵コンテの代わりに、アニメーションのようなものを作ってくれたので、非常に助かりました。例えば「今度は彼女が車に飛び乗るんだ。了解」といった具合にね。僕たちは車の中に乗って演技をしているだけで、実際には何が起こるのかよくわからないのだけれど、あれがあってよかった。
マッツ「『運命のダイヤル』は完全に新しいレベルに達している」
―初めてインディの衣装を着たハリソン・フォードを見たときは、いかがでしたか?
マッツ:混乱しましたよ。衣装合わせをした時に、帽子と革のジャケットを着た彼と、ちょうどすれ違ったんです。それはインディ・ジョーンズでした。
ハリソンは僕が今まで会った中で、一番若い人。80歳になるのに、15~16歳の少年のように振舞うんです(笑)。映画祭の記者会見でもそうだったでしょう? 僕が話していたら、お尻をつねるんだから、まるで16歳の少年ですよ(笑)。彼は本当に情熱に満ちあふれているんです。
―あなたも少年っぽいですよね?
マッツ:そうだね、僕は17歳かな(笑)。僕らは子供っぽい兄弟という感じで、だからウマが合うんですよ。
―彼から何か学んだことはありますか?
ボイド:劇中、マッツとハリソンと一緒のシーンで僕が一言セリフを言うんですが、それはまるで、二人の俳優の演技のマスタークラスを目の前で観ているようでした。その場に自分がいるなんて! シュールという言葉しか出てこない。信じられなかった。一つだけ言えるのは、「ああ、もっと時間が欲しい」ということ。
―いまの時代に『インディ・ジョーンズ』や『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズのような純粋な冒険映画がほとんどないことを、どう思われますか?
ボイド:僕たちに必要なのは、本来の人間味です。今、我々は高度にデジタル化された情報の世界に住んでいて、人間味のないものばかり。人間らしさが必要であり、その物語を書く人が必要なのです。だから、何度も何度もリブートするのではなく、新たに純粋な物語を作ること。“本物の何か”が必要なのです。
マッツ:『インディ・ジョーンズ』は、バート・ランカスターが主演した海賊映画(『真紅の盗賊』[1952年]。『パイレーツ・オブ・カリビアン』の元ネタと言われている)など、1940~1950年代の冒険活劇を思い起こさせます。あの頃の活劇はスクリーンに目を釘付けにさせ、とにかくいつもチャーミングだった。海賊が笑顔で、歌まで披露してくれたんです。ハリソン・フォードのインディにはそうした魅力があり、真似なんてできません。
『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』は完全に新しいレベルに達していて、私たちを刺激し、血湧き肉躍る世界へと誘ってくれる。それは、想像力の力ですね。『運命のダイヤル』の何が美しいかというと、2023年現在のモラルや倫理観とは違う世界を描きつつも、私たち全員が共感できる物語でもある。とても解放的な映画になっています。
―他にやってみたい冒険やジャンルはありますか?
マッツ:もう今回、夢は叶ったからね(笑)。でも、ゾンビにはなってみたい。僕はゾンビ映画をやってみたいとずっと思っているんです。
取材・文・撮影:石津文子
『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』は全国公開中