「ホラー映画はアナログ感を大事にすべきだと思う」
―『忌怪島』には陰惨な場面もありますが、これまでの作品と打って変わって明るい場面も多いですね。
あえてホラーに向いていなさそうな、開放的な南の島を強調して明るくしたかったんです。海辺で若い子がキャッキャしているシーンもあっていいんじゃないかと。
―“イマジョ”も陽光照る中に登場しますね。
いやあ、最初は「こんなに明るくして大丈夫?」と言われたんですよ。でも、監督として最初に携わった『学校の怪談G』(1998年)にも、『呪怨』(2000年)に登場する俊雄の原型となったキャラが真昼間に登場します。だから、これからも明るくて怖いシーンにはチャレンジしていきたいと考えています。
―私だけかもしれないのですが、ホラー映画のキャラクターははっきり観てみたいんですよ!
(笑)。はっきり見えすぎると、怖さがスポイルされてしまうかもしれないので、気は遣いますよ。でも、いざやるとなると「知るか!」みたいな気持ちで開き直りますね。
―今回は、床が突然海面になったりする、不思議なギミックもあります。
『忌怪島』では、ギミックをたくさん使っています。どれも苦労しました。床が海面になる場面は、プールで撮影したものをVFXで繋げて作ったのですが、スタッフもキャストも「これ、どうするんですか?」と。それはそうですよね、脚本にはト書きで“床に引きずり込まれ、波が立つ”としか書いてないんですから(笑)。
―清水監督の作品にしてはなかなか派手な演出だなと思いました。
確かに派手と言われたらそうですね。でも、ハリウッドやインド映画みたいに派手すぎるCG演出ってあまり好きではなくて。床抜け場面も、かなりアナログな手法を使っているんです。カット割りで工夫したり、水もポンプでバシャーッ! と役者さんにかけたり。みんなビショ濡れになったけど、やっぱりアナログの方が“肌感”が伝わりますよね。ホラー映画は、そういうアナログ感を大事にすべきだと思います。
―とても解ります! CGを使うと物質の“重み”が無くなってしまうんですよね。
そうなんですよ!「なんか違う」と感じてしまうんですよね……。
「“イマジョ”は関節が外れていて、右腕だけが長い」
―清水監督ならではの、お風呂場でのジャンプスケアも健在です。
あの場面には、ちょっと裏話がありまして。“イマジョ”役の祷キララさんにお風呂に潜ってもらって、実際に手を「ヌッ」とだしてもらっているんですよ。
―え? でも、あのお風呂、狭くないですか?
そうなんですよ。僕は「絶対無理だよ!」と言ったんですが、助監督が「いや、いけます!」と。
―それは「ホラー担当」としてクレジットされている川松尚良さんですか?
そうです(笑)。彼が素晴らしいのは、脚本の恐怖描写を誰よりも理解/分析しているところですね。どうやったら脚本通りの画が再現できるか? が、もう(頭の中に)できているんですよ。彼は清水組にはなくてはならない存在です。くやしいなぁ(笑)。“イマジョ”のデザインも彼が勝手にスケッチして、デザイナーに発注しちゃったんですよね。
―熱心ですね!
本当にこだわりが凄いんですよ。公式HPでイメージ映像が観られますが、“イマジョ”って片腕を吊られているんですよね。そこで彼は「“イマジョ”は関節が外れていて、右腕だけが長い」という設定を追加しました。劇中でもそんな場面があるので、注意して観てくれると彼も喜びます。
『忌怪島/きかいじま 』
とある南の島でVR(バーチャル・リアリティ)を研究するチーム「シンセカイ」。しかし、彼らが開発中のシステムに“赤い女”のバグが突然現れるとともに、不可解な連続死が発生する。現実世界と仮想世界が交ざり始めてしまった…? 彼らは謎を解き明かし、閉ざされた島から抜け出すことができるのだろうか!?
監督:清水崇
脚本:いながききよたか 清水崇
出演:西畑大吾(なにわ男子)
生駒里奈 平岡祐太 水石亜飛夢 川添野愛
大場泰正 祷キララ 吉田妙子 大谷凜香 ・ 笹野高史
當真あみ なだぎ武 伊藤歩 / 山本美月
制作年: | 2023 |
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2023年6月16日(金)より公開