目を閉じれば蘇る、玄田哲章の頼れる声『プレデター』
そうした玄田シュワルツェネッガーの揺るぎなさを堪能できるのが、『コマンドー』と並ぶ肉弾スターの代表作『プレデター』(1987年)だ。宇宙から飛来したハンター異星人の前に、次々に命を落としていく最強コマンドー部隊。そのリーダーたるダッチ・シェイファー少佐(シュワルツェネッガー)を玄田が演じる。
菅生隆之、青野武と麦人、大塚芳忠に大友龍三郎と部隊のメンバーの吹替キャストがまた異常に豪華だ。玄田の声には、それら精鋭を率いていっさい違和感のないカリスマがある。何となれば原語版よりも説得力があるといって過言ではない。
『プレデター』をいままで何度観たか分からないが、おそらくその半分以上は日本語版で鑑賞しているはずだ。目を閉じれば、玄田の異常に頼れる声が脳裏に蘇る。
「邪魔するよ」
「マック!」
「血が出るなら……殺せるはずだ」
『コマンドー』のそれらに負けずとも劣らない、名調子の数々をぜひ堪能してほしい。
といいつつ、日本におけるシュワルツェネッガー担当が玄田哲章に一本化されたのは1999年の『エンド・オブ・デイズ』からのことだった。それ以前は各主演作がテレビ放映されるたび、放送局ごとに異なるキャストがその吹替を担当していた。
もちろん玄田はその筆頭だったが(主にテレビ朝日系「日曜洋画劇場」にほぼレギュラー登板)、屋良有作や大友龍三郎、大塚芳忠に銀河万丈などなど、錚々たるメンバーがシュワルツェネッガー役で鎬を削っていたのである。各局がゴールデンタイムに洋画劇場を持っていた頃の話だ。
おそらく各番組それぞれに異なる特色を出す意図があり、そのために予算を投じて新規吹替を都度制作していたのではないかと推測する。地上波テレビでほぼ毎日洋画が、しかもバラエティに富んだ吹替でもって放映されていた。考えてみれば実に豊かな時代だった。
https://www.youtube.com/watch?v=CnTpYEtZXyc