吹替によって宿る絶対的リーダー感
アーノルド・シュワルツェネッガーは日本語を喋る際、玄田哲章の声になる。これは空や海が青かったり、または水道の蛇口をひねれば水が出てきたりするのと同じぐらい当たり前のことだ。
映画史、いや人類史に残る傑作『コマンドー』(1985年)におけるシュワルツェネッガーの名言の数々……
「駄目だ!」
「銃なんか捨ててかかってこい」
「死体だけです」
親の声より聴いたこれらの台詞をいま思い出すとき、すべては玄田による日本語音声で脳裏に蘇ってくる。それほどに違和感のない鉄壁のキャスティングである。
また不思議なことに、玄田哲章の吹替によってシュワルツェネッガー演じる数々の役柄に深みと頼り甲斐と、さらにそこから来る安心感が加味される。玄田といってもうひとつ強烈に思い出される『トランスフォーマー』シリーズのコンボイ司令官役のように、その声と演技力から生まれる絶対的なリーダー感が、シュワルツェネッガーにも宿るということだ。