「先住民文化は毛布の柄一つにも意味がある」
歴史物も色々手がけてきたスコセッシ監督だが、ネイティブアメリカンの近代史に関して扱うのは初めて。
チーフがプロジェクトに参加してくれたのは大きかった。先住民に関しての本を読みはしたが、チーフはもっと深く彼らの文化や歴史について教えてくれた。言葉や祈りの儀式など大切なことを、たくさんね。彼らは地球を愛しリスペクトし、そこでどのように生きるかを伝えてきた。全てが自然と共にあるんだ。例えば、毛布の柄一つにも意味があるんだよ。それを白人達が変えてしまった。そこからオセージの悲劇は始まっているんだ。
監督の言葉を受けてチーフは続ける。
パンデミックがあって我々の文化や言葉についての興味を持った人々も増えてきた。我々は先住民の若者たちに文化や言葉歴史を伝えようとしてきたが、今回は実際にカメラの後ろに回ってエキストラやスタッフとして働くことで、彼らが自分たちの文化や言葉を自覚する機会を持つことができた。オセージの人々は老若男女よく働いてくれたと思う。
先住民の血を弾くグラッドストーンは、自分のルーツを振り返りつつ続ける。
モリーというキャラクターは先住民の間でレガシーになっています。モリーが観客の入口になり、世界の人たちにわたしたちの歴史を知ってもらえたらいいと思います。
私たちにはコミュニティを語る人がまだまだ必要なんです。監督はアーティスティックなアプローチを加え、ストーリーを立ててキャラクターに焦点を絞ることで観客の琴線に触れることができると考えたのだと思います。
母の代わりに一家を束ね財産を管理し、コミュニティでも信頼される知力と行動力に富んだ女性モリー。彼女がコミュニティのキーパーソンだと見抜いたビルがアーネストを送り込むにも理由があるわけだ。
1920年代のオクラホマと2023年のアメリカ社会がつながる
アーネストとの愛情を信じたモリー、モリーを愛してはいるのだが叔父への義理つまりは白人社会との繋がりを断ち切れないアーネスト、後半はこの2人のラブストーリーが、新生したFBIの調査と裁判と絡みながら物語を引っ張っていく。
デニーロが付け加える。
脚本を読んだとき、ビルというキャラクターは理解しがたかったがベストを尽くしたつもりだ。つまりは、この当時のオーセージにはびこっていたのはシステマティック・レイシズムというべきものだつたのではないか。それは今にもつながる問題だと思う。まぁ、金のためならなんでもやるし、誰でも使うビルという男は、今でいうならトランプみたいなやつなんだ。
この一言で、1920年代のオクラホマと2023年のアメリカ社会がつながる。
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』、紛れもなくマーティン・スコセッシ監督の傑作の一本である。
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は2023年10月6日(金)より劇場で独占公開後、Apple TV+で全世界配信
CS映画専門チャンネル ムービープラス「特集:カンヌ映画祭スペシャル2023」は2023年5月放送