エンドロールが始まるとすぐ、会場は熱い拍手の渦に包まれた。
5月17日、カンヌ国際映画祭2日目。
最高賞である「パルム・ドール」を争うコンペ部門のトップバッターとして日本代表の映画『怪物』が上映された。
今やカンヌの常連となった是枝裕和監督には、地元ファンからも日本語の声援が飛んだ。
感動的なスタンディングオベーションは、なんと10分近くも続いた。
映画祭は12日間にわたって行われる。
その中で、ヴィム・ヴェンダース、ケン・ローチといった世界の名だたる監督たちが賞を競う。
授賞式は27日。
果たして是枝は、2度目のパルム・ドールを手にすることができるだろうか。
世界中の映画スター、一堂に
カンヌ国際映画祭。
毎年5 月、南仏のリゾート地カンヌで開かれる、世界最大の映画祭だ。
世界から選りすぐりの新作を集め、各国の映画人、スターたちが集まる映画の祭典。
76回目の今回は16日、今年の名誉パルム・ドール受賞者マイケル・ダグラスと、フランスの名女優カトリーヌ・ドヌーヴの開会宣言で幕を開けた。
オープニング作品は、ジョニー・デップが久々の銀幕復帰を果たした話題作「ジャンヌ・デュ・バリー」。
フランス国王ルイ15世(マリー・アントワネットの義父)を演じたデップは流ちょうなフランス語を披露。
レッドカーペットでも気さくにファンサービスに応じていた。
ユマ・サーマン、レオナルド・ディカプリオ、トム・ハンクス。
さらにはスカーレット・ヨハンソン、ハリソン・フォード、マッツ・ミケルセン、アントニオ・バンデラスらも映画祭に登場する。
日本からも、役所広司、安藤サクラ、永山瑛太。
そして北野武、西島秀俊、加瀬亮らが華やかにレッドカーペットを彩る。
一般観客がなかなか立ち入ることができない舞台。
カンヌ国際映画祭とはどんなところなのか。
赤いじゅうたんと蝶ネクタイと
まずはアウトラインから。
カンヌは長く美しい砂浜に沿って町ができている。映画祭の中心は、旧港の東側に建つ「パレ・ド・フェスティバル(お祭宮殿)」という大きな複合施設だ。
最も大きなホールは映画の発明者の名をとったリュミエール。
コンペ作品の正式上映会場である。
入口からクロワゼット通りの歩道まで、赤い絨毯が敷かれる。
その上を、ゲストやスターたちが、カメラの砲列の前を通って入場する。
恒例の「レッドカーペット」だ。
夜になると映画の正式上映があるが、来訪者にはドレスコードがある。
女性はゆるめだが、男性は最低でもダークスーツに蝶ネクタイが規則。
レッドカーペットを歩く人も、写真を撮るカメラマンも、みな蝶ネクタイ姿。カンヌならではの光景だ。
レッドカーペットが最も華やかなのは、スターが結集するオープニングとクロージングだ。
スターをひと目見ようと、ファンが朝早くから会場前で場所取りする光景も恒例である。
昨年は『トップガン マーヴェリック』が世界初のお披露目となった。
上映が終わり、レッドカーペットにトム・クルーズが現れると、フランス空軍の飛行チームが上空に三色旗を描いてみせた。
さすが世界一の映画祭。
カンヌは本当にやることがでかい。