Netflixで独占配信中の『ウェーコ事件:アメリカに訪れた終末の日』は、米テキサス州ウェーコ(ウェイコ)で1993年に起こった「ウェーコ事件」「ウェーコ包囲」と呼ばれる凄惨な銃撃事件の顛末を追ったドキュメンタリーである。
作品内で使用されている映像の中には初公開のものも含まれていて、まるで映画か最新ゲームのような、30年前のものとは思えないほど鮮明な空撮映像や再現映像のほか、かなり生々しいカットもあるので要注意だ。
神の名を騙るド変態教祖
ウェーコといえば、1800年代末に後のドクターペッパーとなる炭酸飲料が生まれた街として知られている。ほかに歴史的建築物や豊かな自然など観光名所は多いものの、銃所有のハードルが全米イチ低いテキサスだけに、重火器絡みの死傷事件が起こりがちな土地でもある(2022年の小学校銃乱射事件は言わずもがな、2015年にはバイカーギャング同士の激しい銃撃戦で死者が出た)。
そんな街で90年代に起こった「ウェーコ事件」は文字通り全米を震撼させた。コミューン―衣食住を共にする共同体―を築くカルト教団は少なくないが、新興宗教団体<ブランチ・ダビディアン>を率いるデヴィッド・コレシュはウェーコの地で、お約束のように一夫多妻制(未婚・既婚を問わず全ての女性信者と結婚!)を含む異様な集団生活を送っていた。
世界の終末は近い 敵は連邦政府
ブランチ・ダビディアンは1950年代に某プロテスタント系信者が興した“はぐれ思想”がベースになっていて、その当時からウェーコに設立したマウント・カーメル・センターを拠点に活動していたらしい。そこに80年代にやってきたのが、後にコレシュと改名することになるヴァーノン・ハウエルだった。やがて組織から離れ新たな派閥を形成したハウエル=コレシュは指導者亡き後、その息子と後継者の座をめぐって銃撃戦を展開。その無茶苦茶なエピソードからも、彼の過激な内面がうかがえる。
教団およびコレシュには重火器の違法な保有だけでなく、未成年者を含む信者との節操のない性交など、政府から“目をつけられる”要素が過積載だった。しかも彼は「世界の終末」を説き、“悪の手先”だというFBIと溜め込んだ重火器で一戦交えようとしていたのだから、なんだかもう恐ろしいというか無謀というか……。
『ウェーコ事件:アメリカに訪れた終末の日』
1993年、大量の銃器で武装した宗教団体と捜査当局との銃撃戦が勃発し、戦闘は51日間も継続。初公開の資料を交えながら、アメリカの歴史に残る大事件の詳細に迫る衝撃のドキュメンタリー。
制作年: | 2023 |
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