故ロビン・ウィリアムズ悲願の企画をガス・ヴァン・サントが引き継ぐ!
ガス・ヴァン・サントとホアキン・フェニックスのタッグというだけで「はい、観る~」とチェックを入れた映画ファンは少なくないはず。本作は酒に溺れ、飲酒運転による交通事故で四肢が麻痺するも風刺漫画家として成功したジョン・キャラハンの伝記映画である。
実はキャラハンの自伝の映画化権を保有していたのは、故ロビン・ウィリアムズだったという。本作は『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997年)を経てウィリアムズから映画化を依頼されたヴァン・サントが、多くの友の死を乗り越えて実現させた20年越しの企画なのだ。
ソニック・ユース! スリーター・キニー! ロックファン垂涎の豪華キャスト
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米オレゴン州ポートランドで暮らしていたキャラハンが亡くなったのは2010年のこと。同じくポートランドに長らく住まいをかまえているヴァン・サントは新聞に連載されていた彼の漫画を読んでいて、映画化が決まってからはインタビューを行うなど積極的に交流を重ねたそうだ。もちろんホアキンも徹底したリサーチを重ね、その演技を観た親族はキャラハンそのものだと称賛したらしい。二人の顔、ぜんぜん似てないのにスゴいな!
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そんな本作、まずは豪華かつ多彩なキャストに注目したい。断酒会を主催する金髪ロン毛のカリスマ男ドニー役にスリム化したジョナ・ヒルを持ってきたのは意外だったが、このボンボン役がなぜかハマりまくっていて二度ビックリ。酒クズ仲間のデクスター(ジャック・ブラックがお笑い演技を封印!)や、若干ご都合的な美しい彼女アヌー(ルーニー・マーラ)といった個性的な俳優/キャラクターがまったくイヤミを感じさせないのも、やはりヴァン・サント作品ならではだろう。
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怪優ウド・キアの登場にもちょっと得した気分になったが、なんといっても元ソニック・ユースのキム・ゴードン、ゴシップのベス・ディットー、そしてポートランド仲間でもあるスリーター・キニーのキャリー・ブラウンスタインの出演は、インディーロック好きには嬉しいところ。断酒会のメンバー役で出演しているベスの演技は特に素晴らしく、その極濃な存在感を武器に今後どんどん女優業に力を入れてほしいものだ。なお、キャラハンのレイジーな介護士役はオレゴン在住のハッパ芸術家トニー・グリーンハンドだったりする。どういう人選だよ!
あえて“過剰”になることを避けた、不思議な居心地の良さ
障害を抱えながらも人生に輝きを取り戻すという物語自体は珍しいものではないが、単なるお涙頂戴の感動物語にならないフラットさはさすがヴァン・サント。
ホアキン演じるキャラハンが電動車椅子で歩道を爆走したあげく段差につまづいて地面に吹っ飛ぶ衝撃的なシーンなどは「Keep Portland Weird(変わり者のままであれ)」がスローガンの街だけあって……というか生前のキャラハンは実際にそういう感じの人だったそうで、なんというか生き急いでいる感が半端じゃない。
そんなキャラハンが暮らしていたポートランドの北西部といえば、すっかりお洒落タウンとしてファッション雑誌などにフィーチャーされるようになった今でも、比較的未開のエリアである。ダメ人間は多いけど根っからの悪人は出てこない本作からも、そんな土地の不思議な居心地の良さがにじみ出ているかのようだった。
雨季が長いポートランドが舞台のわりに晴れのシーンが多く、その代わりに断酒会のシーンではキャラハンのメンタルとシンクロするように背後でシトシトと雨音が聞こえる演出も見事。余談だが、キャラハンがアヌーと訪れるレコードショップにはワイパーズやポイズン・アイディアといったバンドのチラシが貼ってあったりするので、劇中に散りばめられた“ポートランド感”(撮影はLAだそうだが)を意識して観るのも面白いかもしれない。
『ドント・ウォーリー』は2019年5月3日(祝・金)よりヒューマントラストシネマ有楽町・ヒューマントラストシネマ渋谷・新宿武蔵野館ほか全国公開
『ドント・ウォーリー』
世界は意外とやさしさであふれている。
一度は酒に溺れた車椅子の風刺漫画家、実在したジョン・キャラハンの不屈の人生。それは、ガス・ヴァン・サントが描き出す、やさしさと生きる希望に満ちた人間賛歌。
制作年: | 2018 |
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監督: | |
脚本: | |
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