“恐怖”ではなく“恐怖の克服”の物語
前提として、(不謹慎ですが)マイケルの殺しのシーンは工夫を凝らしているので、スラッシャー映画として十分楽しめる。そして、自らが抱えている恐怖に決着をつけないと、恐怖はまた繰り返される……という本三部作のテーマは腑に落ちます。
本作の主人公は、ジェイミー・リー・カーティス(『エブエブ』でアカデミー賞助演女優賞受賞おめでとうございます!)演じるローリーです。
なぜマイケルはローリーを付け狙うのか? それは人々に恐怖と絶望を植え付ける存在であるべきマイケルにとって、唯一自分の手から生き延び戦おうとする彼女の存在は危険だということなのでしょう。なぜなら彼女が“反マイケル”のシンボルになってしまうからです。
一方のローリーも、マイケルとの過去――かつて襲われ生き延びたこと――に強く囚われている。それが結果的にマイケルを引き寄せているのかもしれません。リブート版『ハロウィン』サーガは、“恐怖”ではなく“恐怖の克服”の物語だったのです。
随所に散りばめられたオリジナル版&先輩監督へのオマージュ
……などと理屈っぽく書きましたが、マイケルの怖さ&かっこ良さ(←不謹慎ですが)は本作でもチケット料金分以上に描かれているのでご安心ください。
映画の序盤、ハロウィンの夜に子どもが『遊星からの物体X』(1982年)をTVで観ていますが、1978年のオリジナル版『ハロウィン』では子どもたちが『遊星よりの物体X』(1951年)をTVで観ています。『遊星からの物体X』はジョン・カーペンターによる『遊星よりの物体X』のリメイクであり、こういうマニアックな工夫もあります。
In John Carpenter's Halloween (1978), a young Lindsey Wallace is watching the original version of The Thing From Another World, later remade by John Carpenter as The Thing in 1982 pic.twitter.com/4gF6tGK0mR
— Horror4Kids (@horror4kids) April 5, 2022
また今回、物語のキーとなる人物の名がコーリー・カニンガムというのですが、これはスティーヴン・キング原作×ジョン・カーペンター監督『クリスティーン』(1983年)のオマージュで、主人公アーニー・カニンガムにちなんで名付けたそうです。
監督のデヴィッド・ゴードン・グリーンの次回作は、リメイク版『エクソシスト』。『ハロウィン』サーガで描かれた“恐怖が人の心を蝕む”というテーマが、次の作品にも継承されるかもしれませんね。
文:杉山すぴ豊
『ハロウィン THE END』は2023年4月14日(金)よりTOHOシネマズ日比谷、渋谷シネクイントほか全国公開
『ハロウィン THE END』
殺人鬼ブギーマンことマイケル・マイヤーズが再びハドンフィールドを恐怖に陥れた事件から4年が経ち、街は少しずつ平穏な日常を取り戻しつつあった。マイケルの凶刃から生き延びたローリー・ストロードは孫娘のアリソンと暮らしながら回顧録を執筆し、40年以上にわたりマイケルに囚われ続けた人生を解放しようとしていた。
しかし、暗い過去をもつ青年コーリーが、4年間、忽然と姿を消していたマイケルと遭遇したことをきっかけに、新たな恐怖が連鎖し始める。ついにローリーは、長年の因縁に決着をつけるべく、マイケルと最後の対峙を決意するー!!
映画史に恐怖を刻み続けた大ヒットホラーシリーズの完結作がついに、幕を開ける!!
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
製作総指揮:ジョン・カーペンター ジェイミー・リー・カーティス
ダニー・マクブライド デヴィッド・ゴードン・グリーン
出演:ジェイミー・リー・カーティス
アンディ・マティチャック ローハン・キャンベル
ウィル・パットン カイル・リチャーズ ジェームズ・ジュード・コートニー
制作年: | 2022 |
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2023年4月14日(金)よりTOHOシネマズ日比谷、渋谷シネクイントほか全国公開