「タトゥーに抵抗はなく、むしろ我慢しているくらいです(笑)」
―本作に印象的な役柄で出演されているチャン・ドンユンさんや、2018年の『空から降る一億の星』でも共演されたチョン・ソミンさんについて、改めてどんな印象を持たれましたか?
イ・ダヨン役のチョン・ソミンさんとは再び共演できてとても嬉しかったです。チャン・ドンユンさんとは初共演でしたが、彼が演じるイ・ドイルは寡黙なキャラクターなんですが、普段の彼はとても活発で話も面白いですし、愉快な性格なんです。なのでむしろ、そのギャップが魅力だなと思いました。お二人とは現場で楽しく撮影できました。
―もし、本作に登場する怪人のように驚異的なパワーを得られるとしたら、どんな能力がほしいですか?
う~ん……“世界を自由に往来できる能力”とか。なんだか恥ずかしいな、ちょっとオタクっぽいですか?(笑)。最近、日本のアニメをよく観ているからかもしれないです。
―本作の舞台は海の上/船内という設定ですが、実際の撮影現場について教えてください。
セットも使いましたし、本物の船を借りて撮影したシーンもあります。どうしてもセットのほうが楽なんですよね。船もすごく大きなものだったのですが、常に揺れているので船酔いしましたし、疲れやすい気もしました。でも、いま思い返すとそれも楽しかったです。
―本作の撮影には2.5トンもの血糊を使ったそうですが、撮影現場は常に血まみれだったのではないでしょうか? その大量の血糊にまつわる撮影中の印象的なエピソードがあったら教えてください。
今回の撮影で使った血糊はかなりネバネバしていたんです。僕は全身にタトゥーを彫っている役なので、首周りに血糊がついてタトゥーシールが剥がれてしまいました。終始それを直しながらの撮影になったので、その点では苦労しました。
―私生活で、タトゥー/刺青を彫ることに抵抗はありませんか?
まったく無いですね。むしろ彫りたいのを我慢しているくらいです(笑)。
「海外のファンの皆さんにも注目してもらえるよう努力しなければ」
―改めて完成した作品を見て、どうお感じになりましたか?
僕も観客の皆さんと同じように衝撃を受けました。キャラクターの残虐性やストーリーについて、台本やシナリオで読んでいたものと同じく展開が全く予想できない作品になっていたので、満ち足りたような感覚になり、胸がいっぱいになりました。
―ジョンドゥはなかなか大変な役だったかと思いますが、プライベートとの切り替えはうまくできましたか?
実は、ジョンドゥに関しては切り替えは難しくなかったんです。というのも彼には共感ができない、その必要がない人物と考えて“なりきって”いたので、そこは大変ではなかったです。ただ、撮影中に体力的にキツいと思ったことはありました。
―本作は<トロント国際映画祭>にも公式招待されましたが、参加されていかがでしたか? 海外におけるKコンテンツの人気の高さなどは実感されましたか?
海外の映画祭に参加したのは初めてだったんですが、本当にいい経験ができました。こんなに大きな国際映画祭に作品を招待していただいて嬉しかったですし、僕自身も楽しめました。いまKコンテンツは様々な国でホットですよね。その国の一人として嬉しく思っています。
今回、トロントでは『オオカミ狩り』が好評を得ましたし、他の韓国作品も招待されていました。そういう状況を見て不思議な気持ちにもなりましたが、胸が一杯になる思いでした。同時に、さらに頑張って海外のファンの皆さんや関係者の皆さんに注目してもらえるよう努力しないといけないと思いました。
「日本の作品にも参加してみたい」
―イングクさんにとっての、歌手活動と俳優活動の「共通点」と「最も異なる点」を教えてください。
歌手活動はステージに立って、1曲あたり長くて5分くらいの歌の中にストーリーを盛り込んで、語って歌い、観客に伝えて一緒に分かち合う、“コミュニケーション”を取るというやり方です。俳優のほうは、共演者の皆さんと息を合わせて作品を作り上げます。そして完成したものを皆さんに観ていただくという、作業の仕方がまず違います。
ただ、どちらも“作品に没頭する”という意味では同じですし、あくまで表現方法の違いだと思っています。歌手は、自分のストーリーを私的な歌詞に乗せて、メロディをつけて歌い伝える。俳優は相手役がいることもあり、一緒に何かを作って伝える。そういった表現の違いだと思っています。
―昨年、名古屋で開催された<Asia Artist Awards>で俳優部門のベストアーティスト賞を受賞されました。今後、日本で活動したいという思いはありますか?
日本の作品にはとても関心がありますし、常々参加してみたいと思っていて、これまでインタビュー等でも何度もそうお答えしてきました。
―好きな日本の映画やドラマはありますか?
『告白』(2010年)という作品を観まして、とても興味深かったです。犯罪者のモンタージュから物語が展開していく『怒り』(2016年)という作品も面白かったですね。
―日本のファンに向けて、イングクさんイチオシの『オオカミ狩り』の見どころを教えてください。
やっぱりなんといっても、ジョンドゥの活躍に期待してほしいです。
『オオカミ狩り』は2023年4月7日(金)より新宿バルト9ほか全国公開
『オオカミ狩り』
2022年、フィリピン マニラ。現地で逮捕された犯罪者たちを乗せた貨物船“フロンティア・タイタン号”が釜山港に向けて出航した。長年、凶悪犯罪を担当してきたベテラン刑事の約20人が護送官として乗船。釜山では、海上交通管制センターで海洋監視システムを設置。万全な体制により、韓比共同護送計画(プロジェクト名:オオカミ狩り)が進められた。監獄化した貨物船には、13名に対する殺人および殺人教唆、強姦罪に問われ第一級殺人犯として国際手配されたジョンドゥ(ソ・イングク)、特殊暴行17件で赤手配者のドイル(チャン・ドンユン)など極悪非道な犯罪者たちが収容されていた。その夜、密かに脱走を企てていたジョンドゥと刑事として紛れ込んでいたジョンドゥの一味により暴動が勃発。船上は武器を手にした犯罪者たちで溢れかえる。仲間以外は誰であろうと容赦なく殺める犯罪者たちと彼らに立ち向かう警察。そこに、眠っていた“怪人”が目を覚まし、熾烈な戦いが幕を開ける。地獄の航海から生き残るのは誰か……。
監督・脚本:キム・ホンソン
出演:ソ・イングク チャン・ドンユン
ソン・ドンイル パク・ホサン チョン・ソミン
コ・チャンソク チャン・ヨンナム チェ・グィファ
制作年: | 2022 |
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2023年4月7日(金)より新宿バルト9ほか全国公開