ボウイの未公開映像と生前に遺した言葉で綴るドキュメンタリー『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』監督インタビュー

「今では誇りを持ってボウイの大ファンだと言えます」
―ボウイの語りのみで構成することにしたのはどうしてですか?
彼の真実を生きたのは彼ひとりですから。
―少年時代にどのようにボウイと出会ったかを教えてください。
ぼくにとってボウイは、親の影響なしで自分で選んで聴きはじめた最初のアーティストでした。12〜13歳、思春期に入りはじめた頃、彼はぼくの目を開いてくれました。文化や世界における自分の位置づけ、アイデンティティといったものに対して。単に一緒に歌う音楽というだけじゃなく、もっと文化的に深遠なものに触れるきっかけになったんです。

『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』© 2022 STARMAN PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
―監督がその年齢の頃というと、アルバム『スケアリー・モンスターズ』の時代です。その次の『レッツ・ダンス』でボウイが国際的な大スターになっていくのをどう思っていましたか。
あんまりよく見ていなかったんですよね。もうちょっと経って13~14、15歳になった頃は、もっとアンダーグラウンドに惹かれていたということもあって、彼はメジャーの方向に行っていたから、新しい作品を追いかけるのをやめてしまったんです。とはいえ、ボウイのアルバムは折々に立ち返っていく人生のサウンドトラックでした。
この企画に着手した時には、自分は彼を高く評価していたけれど彼の大ファンとは呼べなかったと思います。けれど今は、誇りを持って自分はボウイの大ファンだと言えます。それはやっぱりボウイがすごいんですよね。これだけの時間、彼を研究して過ごしてきて、彼のことをかつてなく素晴らしいと思っているわけですから。

ブレット・モーゲン監督 『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』© 2022 STARMAN PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
「こんなにも継続的に刺激を与えてくれる存在を他に知りません」
―90年代のボウイが強い印象を残すのも今回の作品の魅力だと思います。
ぼくのお気に入りの時期ですね! アーカイヴを時系列に調べていて、1995年のアルバム『アウトサイド』にさしかかった時、前のボウイが戻ってきたと思いました。全キャリアを見ても最も革命的でアーティスティックな時代だったと言うことさえできるのではないでしょうか。そこから彼は前に進んで、驚くべき音楽的日記を作り続けていたように思います。年を取ることについて、ぼくらが生きている世界について……。年齢を重ねれば重ねるほど彼の後期の作品が好きになっていくんです。

『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』© 2022 STARMAN PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
―逆に初期、『ジギー・スターダスト』以前の時代にもボウイはとても興味深い活動をしていますが、残されている素材が少ないという問題がありますね。
映画が『ジギー・スターダスト』の頃からはじまるのは偶然ではありません。ひとつはジギーより前の素材が少ないということ。それに加えて、デヴィッド・ボウイが世界に本当の意味で知れ渡った時からはじめたいという思いもありました。グローバルな、時代精神に合うようなインパクトを与えて衆目が集まった時期を大きく取り上げたことは、自分でも気に入っています。

『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』© 2022 STARMAN PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
―この作品を手掛けたことでボウイに対する評価はどう変わりましたか?
人物でも、メディアでも、こんなにも継続的に刺激を与えてくれる存在を他に知りません。贈り物をずっと贈られ続けているような。生涯彼のことを掘り下げようとしても最終目的地にはたどり着けないと思うし、ボウイがそのようにしたんだと思います。ボウイを思うと謙虚な気持ちにさせられるし、その人間性、共感力、知性、優美さ、尊厳といったものにインスピレーションを与えられ続けています。

ブレット・モーゲン監督 『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』© 2022 STARMAN PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
取材・文:野中モモ
『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』は2023年3月24日(金)よりIMAX/Dolby Atmos同時公開
『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』
現代において最も影響力のあるアーティストにして“伝説のロック・スター”デヴィッド・ボウイの人生と才能に焦点を当てる『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』。
30年にわたり人知れずボウイが保管していたアーカイブから選りすぐった未公開映像と「スターマン」「Changes」「スペイス・オディティ」「月世界の白昼夢」など40曲にわたるボウイの名曲で構成する珠玉のドキュメンタリー映画。
監督・脚本・編集・製作:ブレット・モーゲン
音楽:トニー・ヴィスコンティ
音響:ポール・マッセイ
出演:デヴィッド・ボウイ(アーカイヴ映像)
制作年: | 2022 |
---|
2023年3月24日(金)よりIMAX/Dolby Atmos同時公開