1 2
一大歴史絵巻“赤壁の戦い”を楽しむために
ジョン・ウー監督の『レッドクリフ Part I』(2008年)『レッドクリフ Part II ―未来への最終決戦―』(2009年)は、ただ見ているだけでも十分に面白いが、中国人なら誰もが知っている<三国志>を題材にしているだけに、現代の日本人にはわかりにくいところなきにしもあらず、だ。この際、映画を見る前にちょっと予習しておこう。
多士済々な豪傑・知将たちの物語
漢代(BC206-AD263)末期、次の覇権をめぐって英雄たちが壮大な戦いを繰り広げた。特に、魏・呉・蜀という三国による“国盗り”物語は、明代(1368-1644)になって、血湧き肉躍る歴史小説として完成される。それが<三国志>である。
魏の曹操、呉の孫権、蜀の劉備ら、一国の主ばかりでなく、関羽、張飛、諸葛孔明ら、多士済々な豪傑・知将たちの物語は、広く中国人に愛され、中国文化や精神のルーツとなった。ハリウッドで最も成功した中国人映画監督ジョン・ウーが、この中国人の魂の物語を映画化しようと思い立ったのは、ごく自然の成り行きだったろう。
1 2