『エブエブ』でブルース・リーもジャッキー・チェンも成し遂げていない偉業を達成
ここまででも充分すごいことだ。それなのに、ミシェルは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017年)、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021年)というMCU映画2作に出演し、まったく違う役を演じるというMCU出演俳優史上でも稀な快挙を達成。どちらもミシェルに似合う威厳と気品を兼ね備えた役だった。
MCU characters that steal every scene: Michelle Yeoh pic.twitter.com/VoycaoTz3L
— Nancy Wang Yuen (@nancywyuen) September 10, 2021
それだけではない。さらにミシェルは、多くのSFファンがリスペクトする『スタートレック』シリーズの『スタートレック:ディスカバリー』(2017~2022年)にも出演。こうゴージャスな経歴が続くと、実際は出ていないんだが『スター・ウォーズ』シリーズのどれかにも、品があって画期的に強いキャラクターで出ていた気がしてくる……。
No thoughts, head empty. Just Michelle Yeoh in Star Trek: Discovery pic.twitter.com/bK09vI8phR
— Paramount+ UK & Ireland (@ParamountPlusUK) December 6, 2022
このようにわがまま極まりない経歴のミシェルだが、2023年3月3日より日本公開の主演最新作『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』ではゴールデングローブ賞を受賞し、アカデミー賞にも最多ノミネートされた。カンフー・ファイト・シーンを披露した作品で、ゴールデングローブ賞を受賞し、アカデミー賞にも選ばれたのだ。これはブルース・リーもジャッキー・チェンも、ジェット・リーもドニー・イェンも成し遂げていない偉業である。
信じられないほど泣けるカンフー・シーン満載の感動作
『エブリシング~』のカンフー・ファイトは、物語的に意味のないアクション・シーンではない。劇中、ミシェルがカンフーを繰り出すたびにマルチバースの危機が回避できそうになるだけでなく、ミシェル演じる主人公が抱える移民の生きづらさ、夫婦のすれ違い、壊れかけた親子の絆といった問題も解決に向かい出す。嘘みたいな話だが本当だ。なんせ監督は、「この映画を作ったヤツの尿検査をした方が良いのでは……?」と観客に思わせてしまうほど不思議かつゴキゲンな映画『スイス・アーミー・マン』(2016年)を撮ったコンビ、ダニエルズだから。
Doing an AMA on Reddit tomorrow. Ask us about SwissArmyMan, Possibilia, that new Nike commercial, or whatever. 👍🏻 pic.twitter.com/qGZUSQtyCQ
— Daniel Kwan (@dunkwun) August 9, 2016
ダニエルズは今回も、その俺ジナル極まりないスキルをスパークさせて、信じられないほど泣けるカンフー・シーン満載の感動作を作り上げた。そんな映画がアカデミー賞に選ばれたのだ。カンフーや中国文化の普及、そして中国人がナメられないために映画作りに尽力を注いだブルース・リーも、草葉の陰で泣いているかもしれない。