ジャッキーを食った『ポリス・ストーリー3』
ミシェル・ヨーはわがままな経歴のオーナーだと思う。香港アクション映画『ポリス・ストーリー3』(1992年)に出演して、主演のジャッキー・チェンに負けない無茶なスタントを披露。これだけでも偉業すぎる。ちなみに『ポリス・ストーリー3』は、『通天大盗』(原題:1987年)への出演を最後に結婚のため引退していたミシェルの復帰作でもある。
同作の撮影前、ジャッキー・チェンは「ミシェルにアクションができるのか?」と疑っていたという。しかし、撮影がはじまるとミシェルはジャッキー顔負けのアクションを次々と披露。劇中、ミシェルが運転するバイクが、線路を走る列車の屋根に飛び移るスタントも自ら挑戦している。
実はこのスタント、本来はスタントマンがやるはずだった。しかし、撮影前日にスタントマンが負傷してしまう。そうなると、このバイク・スタントの撮影は無理かな……と思いきや、ミシェルは「バイクの免許が無いので、運転の仕方を教えてくれたら私がやりますよ」と志願。本人が宣言した通り、1日でバイクの運転をおぼえてスタントを成功させた。
Michelle Yeoh es una indiscutible estrella del cine de acción.
— Cinescondite (@cinescondite) August 6, 2022
Hoy es el cumpleaños de la actriz de 'Everything Everywhere All At Once', y lo celebramos con el detrás de cámaras de la impresionante escena de riesgo que hizo para 'Police Story 3: Super Cop'. pic.twitter.com/CCEIwTrDwu
「私がジャッキーのお尻を蹴ってあげたんです(笑)」
そんなミシェルのアクション・スキルに驚愕したジャッキーは撮影中、「このままでは自分が埋もれてしまう……」と、より危険なスタントに挑戦していく。その結果、撮影中はミシェルとジャッキーは“どっちが身体を張ったアクションをするか”競い合ったという。このことについてミシェルは、軽やかにこう語っている。
撮影中、ジャッキーから「もうクレイジーなスタントをしないでくれ! 君がまた危険なスタントをやったら、僕はさらに危険なスタントをしなければいけないんだ!」と言われました。彼には相当なプレッシャーだったんでしょう、可哀想に(笑)。彼は、私のアクションを見るまでは「女性は映画でアクションをやるよりも台所にいるべきだ」と考えていましたから。その古い価値観を変えるため、私が彼のお尻を蹴ってあげたんです(笑)。
ジャッキーをハラハラさせたミシェルが演じたキャラクターは、世界中のアクション映画ファンのハートをガッチリと掴んだ。そして彼女が演じたキャラクターを主役にしたスピンオフ映画『プロジェクトS』(1994年)も制作された。
これだけでもアクション映画史的には偉業中の偉業を成し遂げているのに、『ポリス・ストーリー3』で演じたキャラクターがハリウッドでも注目された彼女は、『007/トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997年)に出演し、どう見てもジェームズ・ボンドより強そうなボンドの相棒役を務めた。