冷静沈着な秋津&平和を求める新波、互いに感じた「演じている本人にも通じる質」
―2019年5月24日公開の『空母いぶき』。国籍不明の武装集団が日本の領土を占領したことをきっかけに、戦後初めての「防衛出動」が発令されるほどの激しい戦闘状態に陥り、命がけの任務にあたる航空機搭載型護衛艦『いぶき』をはじめとする第5護衛隊群の自衛官たちの様子が描かれた本作。このような作品に出演したことは、役者としてどんな体験となりましたか?
西島:ほぼ現実に近い、かなりリアルな設定の作品で、かつ、国の命運がかかった物語に参加することは初めてでしたので……実際の撮影もかなり過酷だったなか、「秋津竜太は一体どれほどの重圧を感じていたんだろう?」と想像しながら演じる日々を過ごしました。自分にとって、とても大きな体験になりました。
佐々木:自衛官の役は初めてだったので、新波歳也という役を通して「戦争」と「戦闘」の違いや「専守防衛」について考えるきっかけになりました。どんな作品もそうですし、ほかの役者のみなさんも考えていると思いますが、改めて「役を演じるうえで、覚悟というものが必要だな」と実感した作品ではありました。
―本作で西島さんは航空自衛隊の元エースパイロットで現いぶき艦長・秋津竜太1佐、佐々木さんは秋津を補佐する副長で海上自衛隊の生え抜き・新波歳也2佐を演じていらっしゃいますが、それぞれの役をどのような人物ととらえましたか?
西島:秋津は“これから起こること”をものすごく正確に見抜いている人物で、みんなが思っているよりも状況はおそらく悪くなるであろう……というか、もう完全に悪くなることを見切っていて、現場の最前線にいる人間にそれを判断させるのではなく自分が命令を下す。ハードルを越えるような判断を「自分自身で下す」と決意している人物だと思います。
ですから、周りからすると説明もなく命令されるわけで、「え? なぜいま、このタイミングでその判断を下すんだ?」と思われるでしょうが……例えば、パイロットに「敵の戦闘機を撃墜せよ」という命令を下すことも、そうならざるを得ない状況であれば自分から命令を下すということを考えながら、それでも平和への道を模索している人物ですよね。
佐々木:僕は新波を演じるうえで、秋津と対照的に見えたほうがいいだろうと思いました。空自と海自の違いであったり、三歩も四歩も先を見通した結論を下す沈着冷静な秋津と対照的に、感情も露わに激情的に話をする新波、というふうに見えたらいいなと。
ただ二人が対立し合うのではなく、どんどん悪くなる戦況をなんとか打破して平和に向かうことはできないだろうかとお互いに考えている。なにがベストか、なにがベターか考えながら向かっていく映画になればいいなと思って演じましたね。
それから、自分のなかで「命を大切にする」ということも意識しました。自分の艦にいる人間、そして日本国民、さらには、今回の敵国である東亜連邦の人間に対しても命を平等に、分け隔てなく大切だと思える人間にしたいなと思って役を作りました。
―西島さんは佐々木さんが演じる新波を、佐々木さんは西島さんが演じる秋津をどう感じましたか?
西島:新波というキャラクターですが、蔵之介さんご自身が本当に平和を求めていて、「戦闘を起こさずに、平和を求める道を貫くべきなんだ」という思いは、蔵之介さんご自身が持っていらっしゃる信念なんじゃないかなと思っていて……というのも、日々の撮影のなかで、やっぱりそういうふうにしか見えないんですよ。
それって、新波というキャラクターに命を吹き込む蔵之介さんご自身がそういった信念を持っていないと、そうはならないと思うんです。「こういう役だからこう演じる」ということではない、もっともっと深いところまで演じていらっしゃるなあと、僕は日々、蔵之介さんを見ながら感じていました。
佐々木:秋津はそうですね……海自のなかで唯一ひとりだけ空自の人間がいるという、その立場であるとか、今回のキャラクター設定であるとかっていうのもありますが……僕も同じように、西島さんご本人が何が起ころうと冷静沈着なんだと思うんです。
本番中に一度、声が本当に出なかったときがありましたが、それでも動じない。現場が押し巻きしようが動じない。ストンとそこに立つことができる人間であるというのが、ご本人の資質なんだろうなと思って見ていましたね。
取材・文/とみたまい
<戦争映画ではない、平和のための映画 西島秀俊&佐々木蔵之介、『空母いぶき』を語る>
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『空母いぶき』は2019年5月24日(金)全国ロードショー