科楽特奏隊がゴジラ戦略会議に殴り込み!? ファン丸出しの超マニアックな展開に……
タカハシヒョウリ/大内ライダー:我々ロックバンド、科楽特奏隊と申します。よろしくお願いいたします!
清水俊文/海野航平:よろしくお願いいたします。
タカハシ:科楽特奏隊の名前(ウルトラマンの科学特捜隊に激似!)でゴジラの取材をしていいのかという(笑)。特撮全般が好きなロックバンドということで。
海野:はい、全く問題ないと思います(笑)
大内:非常に光栄です!
タカハシ:お近づきの印として、好きなゴジラのタイプや作品、好きな対戦怪獣のお話を。僕は「東宝チャンピオンまつり」期(1960年代後半~70年代後半に行われた興行)が一番好きで。作品のタイプとしては『ゴジラ対ヘドラ』(1971年)、対戦怪獣はガイガンが好きです!
大内:僕らは生まれが1984~85年なので“VS世代”といいますか、初めて見た映画が『ゴジラvsビオランテ』(1989年)で。やっぱりVSシリーズには特別な思い入れがあるんですけど、これが出たら絶対にグッズを買うなという怪獣はメカキングギドラですね。
タカハシ:僕ら世代的にメカキングギドラは相当カリスマですよね。
清水:登場の瞬間がすごくカッコよかったですよね。
タカハシ:あの“川北後光”が素晴らしいですね!
海野:新宿こんなに広かったっけ? っていうくらい。
大内:当時は田舎に住んでいたので、東京に行ってから「これが都庁か!」みたいなのはすごいありましたね。みなとみらいとかも“名所をゴジラ映画で知る”っていう。
海野:ありますよね~、ありがとうございます。私は“東宝の2代目ゴジラ博士”を名乗っている海野と申しまして、入社は2012年。普通のサラリーマンなんですけれども、社内にゴジラ戦略会議、通称<ゴジコン>という、ゴジラのことをいろいろやる横断型のチームがあり、そこに所属しています。いろんな社内の部署から、いろんな分野の専門家のメンバーがリストアップされて、約20人ほどで構成されたチームです。本当に『シン・ゴジラ』(2016年)の“巨災対(巨大不明生物特設災害対策本部)”みたいなメンバーが。
大内:東宝の各部署の……はぐれ者?
海野:はぐれ者、オタク、一匹狼……。
(一同笑)
海野:そこに僕が選ばれたのは2016年の4月とか、ちょうど『シン・ゴジラ』の前ぐらいからですかね。だからゴジラの仕事自体にメインで関わりはじめたのは2016年。ただ、2014年のハリウッド版ぐらいからちょっとずつ関わっていたので、なんとなく会社の中でゴジラ(関連の仕事)をやりはじめてからは5年くらい経っているという状態です。で、僕の大先輩が……。
清水:清水と申します。よろしくお願いします。生まれは『怪獣総進撃』の1968年、まさに(科楽特奏隊の)お2人がお生まれになった1984年には中学生で、『ゴジラ』のエキストラとして現在は都庁が立っている場所で走り回っていました(笑)
一同:ええ~!?
清水:その当時からゴジラにハマっていたんですよ。それで1993年の『ゴジラvsメカゴジラ』の年に入社して、1996年から東宝の撮影所で働いていました。ですから『モスラ』『モスラ2 海底の大決戦』『モスラ3 キングギドラ来襲』(1996~1998年)では製作部、とミレニアムシリーズ(『ゴジラ2000 ミレニアム』1999年~『ゴジラ FINAL WARS』2004年)を全作品、助監督で担当していました。
タカハシ/大内:そうだったんですね!
清水:今は東京現像所(東宝傘下の映像ポスプロ)にいまして、デジタルリマスターの『ゴジラ』1作目(1954年)や『キングコング対ゴジラ』(1962年)などの陣頭指揮を執らせていただいています。<ゴジコン>には2018年の10月から関わらせていただいていて、それまではただの社内のゴジラファンだったんです。
タカハシ:僕、4K版の完成試写に潜り込んでたんですよ。それが初めての東京現像所体験で。
清水:そのときに舞台挨拶してたのが僕ですね。「こういう風に直しました」って(笑)。
(一同笑)
清水:やっぱり一番好きなゴジラ作品は『キンゴジ』です。あのゴジラは気合を入れて、一コマ一コマこだわって復元させていただいたという感じですね。
タカハシ:素晴らしかったです、本当に!
清水:半年間ほど<ゴジコン>に入らせていただいて、いろいろなイベントや活動をさせていただいているという形です。
タカハシ:ちなみに海野さんの好きなゴジラ作品は……っていうとアレなんですかね、東宝の社員的に角が立つ?
海野:いや、そういうの意外と大丈夫な会社なので(笑)。好きなのは1964年の『モスラ対ゴジラ』。いろんなカットが大好きなんですけど、去年THE ALFEEの高見沢(俊彦)さんとお仕事をご一緒させていただいたときに「何が好きなの?」って聞かれて「『モスゴジ』ですかねえ」とお話をしたんですが、冒頭の波でちょっとずつ岸壁が削れていって卵が海に投げ出されるシーンがあるじゃないですか。高見沢さんと「あそこ、すっごいいいから! あそこだけずっとDVDでループ再生してる」「めっちゃ分かりますそれ!」みたいに盛り上がったっていう思い出が。
(一同笑)
海野:でも自分が初めて正式に関わったという意味で、『シン・ゴジラ』も思い入れがあります。初めてクレジットに名前を出させていただいたみたいな意味で言うと。でも、基本的にはどのゴジラにも思い入れがあるので……って言うと、会社としては満点の回答かなと思います(笑)
タカハシ:東宝の社員さんは、みなさんゴジラがお好きなんですか?
海野/清水:う~~~ん……。
(一同笑)
清水:東宝って、ちゃんとした会社なんですよ。だから、ちゃんとした社会人の方が入社してくるんです(笑)。我々のような「ゴジラ好き好き!」って言ってる人は結構、入社試験段階で多分落とされたんじゃないかと(笑)。
大内:“ファンすぎる”と。
海野:確かに、採用のときに一回もゴジラの話しなかったですね。
清水:入社試験のときは「黒澤映画が大好きです」って話をして。入社してから「お前がこんなオタクだと思わなかった」って言われる(笑)。
ゴジラ戦略会議、通称<ゴジコン>では一体なにが行われているのか!?
タカハシ:それでは<ゴジコン>についていろいろとお話を伺いたいのですが、そもそもの成り立ちとは?
海野さんはハリウッド版ゴジラ、いわゆる“ギャレゴジ(ギャレス・エドワーズ監督の『GODZILLA ゴジラ』:2014年)”にも関わってらっしゃるということですが、こういった企画や作品に対して<ゴジコン>はどういった関わり方をしてきたんでしょうか?。
海野:ちょっと真面目な話をしちゃうので、全部カットしてください(笑)。まず<ゴジコン>ができたのは、確か2014年の10月ぐらい。7月に日本でレジェンダリー版の1作目(通称:ギャレゴジ)が公開になった年ですね。そもそもゴジラって、2004年の『ゴジラ FINAL WARS』の後は丸10年ぐらい、悪い言い方をすると“塩漬け状態”になっていて、東宝としても「どう次をやったらいいのか?」って悩んでいたんですよね。そこで「ハリウッドで改めて映画化する」という話がありまして。そのギャレゴジが全世界的に大ヒットして、ありがたいことに日本でも良い反響をいただけたので、会社全体として「ゴジラっていうものを見直そうよ」というか「もっと大事にしなきゃいけないよね」っていう気づきになったというか。
海野:そこで10月に各部署から当時の部長や室長クラスの人が十数人集まって、<ゴジコン>というものを作りましょうと。彼らの目的は、次のゴジラ映画をどうするか? というところも含めた「ゴジラというキャラクターのトータルプロデュース」というか。僕も仕事を聞かれると「ゴジラのマネージャーをやってます」って答えるんですけど、もしゴジラが芸能人だとしたら、彼にとって何をしてあげたらプラスになるか? っていうことを考えよう、というのが第一の目的だったんです。
そして2016年の『シン・ゴジラ』が興行収入82.5億円という大ヒットで社会現象にもなって。ありがたいことに僕は、ゴジラについて「これからどんどん弾みをつけていきましょう!」っていうタイミングで<ゴジコン>に入れていただいて。そこからメンバーがどんどん入れ替わっていって、今は大体20人ぐらいのメンバーが、本当に各部署から年齢問わず。一番若い子で入社2~3年目の男の子とか、あとは若いママさんとか男女問わず。ロサンゼルスにいる人間もいたり。
タカハシ/大内:へ~~!!
海野:結構いろんな人間がいるんですよ。ゴジラはやっぱり映画の展開がメインなので、どんなに頑張っても年に1本とか2本とかなんですよね。そうすると、その合間を埋める作業っていうのがどうしても必要になってくる。他の特撮シリーズだと1年間通してテレビ放送しているので“タッチポイント”がたくさんあるんですけど、ゴジラは年に1回しかないとなると、「どうしても忘れられちゃうよね」っていう反省があって。僕らはどっちかっていうと、そのタッチポイントを作ることがメインの仕事っていう感じです。なので、主にやっていることは「次のゴジラ映画、こういう企画にしましょう」というよりも、そのタッチポイントを作ることですね。分かりやすく言うと、例えば<ユニバーサル・スタジオ・ジャパン>とコラボしてアトラクションを仕掛けたらどうか? とか。<ゴジラ検定>もその一環ですね。
大内:僕も受験しました!(笑)
海野:<ゴジコン>メンバーの若いママさん社員が「こういうのってファンサービスになるんじゃないですか? 65周年だし、いろいろ振り返る機会としてちょうどいいですよね」っていうアイデアを出して。本番の試験問題は清水さんと僕が中心になって作っていきました。ほかの企画で言いますと、ゴジラ全体のスケジュールを見て、11月3日が『ゴジラ』1作目の公開日で“ゴジラの誕生日”と言われてるので、「ファンのみなさんに還元できるイベントを無料でやりたいね」というアイデアが実現したのが<ゴジラ・フェス>というイベントだったりとか。
清水:そこから、さらに皆さんに親しみやすいものにして“いつも周りにゴジラがある”ような日本にしたい、みたいな(笑)。そういうところで、いろんなイベントを仕掛けたり、商品開発も含めてどんどんゴジラを知ってもらって、親しんでもらおうっていうのを我々で仕掛けているという形ですね。
究極のレアグッズ!? 東宝社員の◯◯◯◯◯にはゴジラが描かれている
タカハシ:イベントはもちろん、ゴジラにまつわる名所みたいなものも2012年以降にいろいろ作られていますよね。そういったものにも関わっているんでしょうか?
海野:そうですね、新宿の<ゴジラヘッド>を皮切りに日比谷のゴジラ像など、とにかくタッチポイントを増やそうと。そういう意味で言うと、「ゴジラというものを社員みんなで意識しましょう」ということの一つに社内会議室の名称変更があります。こういう会議室の名称も今までは普通に数字(第1会議室など)だったんです。それを去年、<ゴジコン>が主導になって「ぜんぶ怪獣の名前に変えましょう」と。そこで怪獣のシルエットをドアに施したり、室内に「ポスターを貼ったらどうですか?」とか。ほかの展開ですと、名刺の裏にもゴジラが入ってたり、“草の根運動”的なことから大きいところまでをトータルでやっているという感じですね。
タカハシ:ある時期から<TOHOシネマズ>の予告映像がゴジラになりましたよね。あれを見たときに「東宝、本気でゴジラやるんだ。いちばんのスターとしてゴジラを扱ってくれるんだ!」って(笑)、いちお客さんとして感銘を受けたんです。
海野:ありがたいですね。
タカハシ:ちょっとマニアックな存在だったゴジラから、今ではちびゴジラも出てくるようになった。
清水:赤ちゃんの頃からゴジラに親しんでもらいましょう、っていう。まずちびゴジラから触れていただこうみたいなところで推していますね。
大内:着ぐるみもそうですよね、ゆるキャラとしての展開。
海野:着ぐるみは去年の<ゴジラ・フェス>でお披露目させていただきました。<ゴジコン>として新しい展開をしつつも、清水さんと僕はゴジラに詳しい側として組織の中にいると思うので、ファン目線に立つ事が使命だと思っています。僕も他社作品含めて映画や特撮のファンですので、自分の好きなキャラクターや作品の展開で、ファンから見て「分かってないじゃん!」となるのが嫌なんですよね。「ファン目線で見たら、こちらの方が正解だ」と思う時には、そちらの方向に落とし込むのが自分の仕事だと思っている部分もあります。そのすべてが正解とは限りませんし、ゴジラというキャラクターにとって、今までにはない視点で新しいことをやることも重要です。ですが、自分がいちファンとして見たときに「これはどうなんだろう?」って思うことには忌憚なく発言するようにしています。とはいえ、僕らなりに「できるだけファンに寄り添った展開にしてよかったね」っていうこともあれば、新しい方向性を打ち出してよかったと思うこともありますし。だから「なにが正解か?」っていうよりかは「いろんな方面に向けて、いろんなゴジラが出せればいいなあ」みたいなことを思いながら仕事をしていますね。
タカハシ:ゴジラが他の怪獣と違うところって“スター俳優”なんですよね。三船(敏郎)がいてゴジラがいる、みたいな。ゴジラは東宝のスター俳優として色々なものを演じているんだけど、その軸にある“ゴジラの良さ”みたいなものは常にひとつっていう。そういうスター感みたいなものがゴジラの好きなところなので、“ゴジラのマネージャー”っていうのはすごくいいなあと思いました。
海野:会社の偉い人たちからは「お前ちょっとカッコつけてない?」って言われるのでバレないように、話をしています。
(一同笑)
タカハシ:<ゴジコン>だからこそのレアグッズはあったりするんですか?
海野:グッズというか……東宝の社員になって「おおーっ!」と思ったことがあって。会社に入った時に健康保険証を作るじゃないですか。東宝社員の保険証にはゴジラが描かれてるんですよ。
タカハシ/大内:えーーーっ!?
海野:和田誠さんに描いていただいたゴジラのイラストが。だから病院で保険証を出すと「え?」みたいな顔を毎回される(笑)。これはある意味レアグッズ感があるというか。
タカハシ:そればっかりはファンが「欲しい!」と言っても手に入らないですからね。
清水:会社が「ゴジラを盛り上げよう」と動き始めてからだと思うんですけど、色んなところにゴジラが使われるようになりましたね。
タカハシ:それはうらやましいですね……。30歳過ぎてても採用面接は受けられるんですか?
海野:枠さえあれば(笑)
タカハシ:僕らもnanacoカードとTカードとエポスカードとかゴジラ(のVer.)なんですけど、そういう“必要性があるグッズ”っていいですよね。使いどころがあるから持っておく理由になるし。
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』
ハリウッド版「ゴジラ」最新作!前作『GODZILLA ゴジラ』から5年後の世界が舞台。モスラ、ラドン、キングギドラらの神話時代の怪獣たちが復活し、世界は破滅へと歩みを進める。
制作年: | 2019 |
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監督: | |
出演: |
CS映画専門チャンネル ムービープラスで『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』徹底解説
『映画館へ行こう5月号』内でインタビューの模様を放送!
ほか、特番『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』も!