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ホラー映画好き必見 「死霊のはらわた」シリーズ最新作『Evil Dead Rise』 vs ニコラス・ケイジの吸血鬼ドラキュラ『Renfield』

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ライター:#杉山すぴ豊
ホラー映画好き必見 「死霊のはらわた」シリーズ最新作『Evil Dead Rise』 vs ニコラス・ケイジの吸血鬼ドラキュラ『Renfield』
『Evil Dead Rise(原題)』

年明け早々、2本のホラー映画の予告編が解禁となり、ホラー映画好きにとっては嬉しい2023年の幕開けとなりました。まずは『Evil Dead Rise(原題)』、そして『Renfield(原題)』です。

『Evil Dead Rise』は1981年の『The Evil Dead』をベースにしています。この作品は1985年に日本で『死霊のはらわた』というタイトルで公開されました。そう、『Evil Dead Rise』は『死霊のはらわた』最新作なのです。

『死霊のはらわた』おさらい

ここで『死霊のはらわた』という作品について振り返ってみましょう。

旅の途中、森の小屋に泊まった5人の若者が悪霊を復活させてしまう。悪霊は人間に憑りつき、憑依された人間はゾンビのような怪物(Deadite/デッディーテ)になってしまう。かくして生存者たちのサバイバル・バトルが始まる……というのが1作目のお話。

この作品が衝撃的だったのは、容赦ないバイオレンス描写。とにかくデッディーテたちの肉体を徹底的に破壊しなければならないのです。クライマックスはデッディーテたちが、まさに内臓をぶちまけて溶解していきます(おそらく『死霊のはらわた』という邦題は、このシーンをイメージしてつけられたんでしょうね)。

81年版は、いわゆるメジャー映画会社の作品ではなく、自主映画的なノリのインディペンデント作品でしたが、カルト映画として人気が出ます。確か、あのスティーヴン・キングも褒めていたような。そして監督はサム・ライミ! この映画を撮った時は20歳になりたてだったそうです。

様々な作品に受け継がれた『はらわた』シリーズ魂

1987年には、続編の形を借りた本作のリメイク『死霊のはらわたII』が、1993年には『キャプテン・スーパーマーケット(死霊のはらわたIII)』が作られます。このシリーズ、確かにスプラッター(血しぶき映画)ではありますが、スラップスティック(ドタバタ喜劇)でもある。特に3作目はヒロイック・ファンタジー×アクション・コメディで、だから公開時は『死霊のはらわた』というタイトルを使わず、ヒーロー映画のパロディ的に売ったのでしょう。

そして2013年に、完全リメイク版の『死霊のはらわた』が公開されます。このリメイク版はオリジナル版に比べ、かなりシリアスなトーン。それ故に評価が分かれました。残酷シーンのエグさはかなりエスカレート。その一方で、『キャプテン・スーパーマーケット』のホラー・コメディ路線を引き継いだドラマ・シリーズ『死霊のはらわた リターンズ』も製作され、2015年から2018年にわたって放送されました。また、2021年に配信されたホラーアンソロジー『クリープショー』のシーズン2:第1話のエピソードが『死霊のはらわた』へのオマージュ回でした。

さて『死霊のはらわた』シリーズには欠かせないアイテムが2つあります。1つは古代から伝わる<死者の本/ネクロノミコン>。これによって悪霊が召喚されるというものです。この本は人間の皮で作った“紙面”に人間の血の“インク”で書かれたという魔書です。そこに呪文が書かれている。そして、この本の呪文をうっかり唱えてしまうと悪霊がやってくるわけです。

ここで思い出すのが、サム・ライミ監督が手掛けた『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022年)。これも禁断の魔書をめぐる話でした。だから本作は“サム・ライミ節炸裂のマーベル版『死霊のはらわた』”とも評されたのです。2つ目のアイテムは電動ノコギリ(チェーンソー)。1作目から、電動ノコギリでデッディーテをやっつけるというお約束があります。

https://www.youtube.com/watch?v=FambF8L3-YI

『Evil Dead Rise』は『死霊のはらわた』×ファミリードラマ?

今回の『Evil Dead Rise』はオリジナル第1作から数えて42年ぶり、リメイク版から10年ぶりの最新作です。予告のトーンを見る限り、かなりシリアスでリメイク版に近いかな。お約束の“死者の本”も“電動ノコギリ”も出てきますが、今までと大きく違うのは物語の舞台。『死霊のはらわた』シリーズは、森で“死者の本”を見つけてしまい怪異が起こる……というお話でしたが、本作はロサンゼルスの古びたアパートでこの本を見つけたことから事件が起こるようです。

そして登場人物たちの設定もユニーク。今までの作品ではホラー映画の定番ともいうべき若者たちが悪霊に狙われますが、この映画ではどうやら3人の子を持つ母親に憑依するらしい。そう、母親がデッディーテになるわけですね。子どもたち、およびその叔母(つまり悪霊にとりつかれた女性の妹)のサバイバルが繰り広げられます。キッチンの日用品とかが凶器に変わる怖さ。そして母親が怪物化するという衝撃の展開。親が魔物に取り憑かれ襲ってくるって、『シャイニング』ですね。<『死霊のはらわた』×ファミリードラマ>という異色の展開になりそうです。

ニコケイ演じるドラキュラが現代社会で巻き起こすドタバタ劇『Renfield』

つづいての作品は『Renfield』。この映画、なにがすごいって吸血鬼ドラキュラが登場し、それをニコラス・ケイジが演じるのです! まずタイトルのRenfield=レンフィールドとは、ドラキュラに仕える使用人の名前。主人であるドラキュラと召使のレンフィールドが現代社会で起こすドタバタ劇。

予告を見るかぎり、レンフィールドがドラキュラの下で働くのが嫌になって集団セラピーを受ける。どうやら彼は、ある事件がきっかけで女警官と恋に落ちたらしい。だからもうドラキュラの下にいたくない。しかし、そのセラピー会場にドラキュラが現れてさあ大変! と(笑)。

主役のレンフィールド役にニコラス・ホルト(ジャンル映画ファンにとっては『X-MEN』のビーストや『マッドマックス 怒りのデス・ロード』などでおなじみ)、女警官役にオークワフィナ(『シャン・チー テン・リングスの伝説』のケイティ)と豪華な布陣です。どうやらレンフィールドもドラキュラからパワーをもらっており、超人的な活躍ができることがわかります。

基本コメディですが、結構過激なスプラッタな描写も多くR指定になりそうですね。ニコラス・ケイジ出演作で言えば『キック・アス』みたいな感じで、ギャグとバイオレンスが混じっているような作品になるのでしょうか? ニコラス・ケイジのドラキュラ姿、とても似合っています。

なお、吸血鬼というのは招待されないとその家に入れない、というお約束があります。予告でも描かれているように、セラピーのリーダーが「ようこそ」とドラキュラを招いたから彼が入ってきちゃったわけですね。こういう定番も嬉しい。ニコラス・ホルトが蜘蛛を食べてパワーを発揮したり、X-MENのビーストのようなアクションを見せるのがかっこいいし、明らかにサノスの指パッチンを意識したセリフ等、昨今のアメコミ・ヒーロー映画への挑戦ともとれる描写も多いですね。

本作はユニバーサルの映画ですが、一時期ユニバーサルは自社の持つホラーキャラ(ドラキュラ、狼男、フランケンシュタインの怪物、透明人間、大アマゾンの半魚人、ミイラ男、ジキル博士とハイド氏)を使って、マーベル・シネマティック・ユニバースに対抗し、<ダーク・ユニバース>という映画世界を作ろうとしていました。しかし、そのプランは頓挫。けれど2020年の『透明人間』の大成功により、無理やりユニバース化しなくても一つ一つのキャラできちんとした映画を作ることに舵取り。『Renfield』は、まさにそうした取り組みから生まれた作品です。

いかがだったでしょうか? ここ数年、ホラー映画界隈は活況ですが、2023年も多くの傑作ホラーに会えそうですね。そんな予感を確信に変える、2本の予告編でした。

文:杉山すぴ豊

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