レンタル屋さんの準新作コーナーで主演作をよく見かける俳優——スコット・アドキンス。
あんまり新作の告知されないもんで、気が付いたら棚に置いてるパターンが多い彼の最新作が、遂にレンタルおよび配信が行われた!シレっと!それが『ネイビーシールズ ローグ ネイション』だ!
ある孤島に降り立ったアドキンス率いる4人の特殊部隊員達。
そこはテロリストを収容する極秘の政府施設であった。
彼らはCIAのチャンネーの付き添いで、とある重要参考人を尋問・護送する任務を帯びていたのだ。
収容所の拷問上等!を地で行くスパルタな姿勢を横目に警戒に当たる彼らであったが、肝心の参考人は「自分はテロと無関係です!」と叫び続けているじゃないの。
とはいえ、尋問自体は自分たちの仕事ではない。
どうやら同行したチャンネー、重要参考人どちらも何かしらの重大な秘密を抱えているらしい。
どうかと思いながらも黙って自分たちの仕事をこなすべく持ち場につくアドキンス達。
痺れを切らして「まあ詳しい話はワシントンで聞くわ」とCIAのチャンネーが言うや否や、タイミングが悪いことに謎のテロリスト集団から突然の襲撃を食らってしまう。
次々と倒れていく収容所を警備する兵士たち。
しかも質より量を優先するテロリスト達はムショにいる囚人までも大解放するもんだからカオスな状況に拍車がかかってしまう。
おかげさまで確変に入ったパチスロの出玉の如く、テロリストが押し寄せてくるのであった。
結果、撃退しつつも地下施設に籠城するハメになってしまうアドキンス達。
逃げ場なし、打つ手なし。
この多勢に無勢な状況で、彼らは生きて基地を脱出できるのか?
そして敵の目的は何なのか?
重要参考人は何を隠しているのか?
各々の思惑を抱えたまま、命がけの96分が幕を開けるのであった。
最終的にスコット・アドキンスが『カメラを止めるな!』といわんばかりに身体を張る本作。
劇場公開なし・ビデオスルーなのもあり、訓練されたアドキンス向上委員会だけが喜ぶ作品になってんじゃないの?と。訝しむ人も中にはいるだろう。
だがソレはビッグな間違いだぜ!ブラザー!!
なにせ全編ほぼほぼワンカット!
おかげさまで見てるコッチもリアルタイムで修羅場に付き合わされていく気分になれるだろう。
しかもアドキンスのスター性だけに頼るわけでもなく、ごく自然な形でカメラが捉えるキャラも敵味方問わず切り替わっていく。
見る人が見ればカットを割っている瞬間が分かるかもしれんが、それをここで指摘するのは野暮って話だ。
本作は回想シーンで茶を濁さず、リアルタイムで起きている『状況』のみを活写していく。
ということで、登場キャラのパーソナルな部分が伺えるのはセリフのみ!
あとは勝手に察してくれ!と言わんばかりに誰もが背中で語っていく。
そんな岩のように武骨な野郎どもが、武骨な状況で武骨に散っていくのだ。
痺れるなというのが無理な話である。
予算の都合もあるのかもしれんが、実にストイックな映画である。
ともすれば予算の少なさを悪い意味で開き直る映画もあるが、本作は違う。
可能な限りカットを割らずに緊迫感を維持している。
まさに冬の本マグロのように捨て所のない作品だ。
映画の展開や絵作りは計算されつくしているのが分かるだろう。
海の向こうでの原題は『One Shot』と、作品の撮り方を比喩したようなタイトルなわけだが、邦題は『ネイビーシールズ ローグ ネイション』
どっかで聞いたことがあるタイトルのニコイチなのが実に哀しい激安っぷりだ。
ダメ押しみたいにレンタル屋の準新作コーナーの端っこか、ホームセンターのワゴンセールに置かれそうな激安ジャケ。
このように邦題およびジャケは激安の殿堂だが、内容は決して安くはない!!断じて!
ともあれ、ストレートに売り出せなかったのを考えると、やはり日本は深刻なスコット・アドキンス後進国と言わざるを得ない現状を痛感してしまった。
今回のアドキンスは、あくまでも任務に忠実な軍人。
例えば、かくれんぼ状態で敵だらけの中を進む際も、不利と判断すれば人質が殺されるのを黙って見届けるなど、彼氏がよく演じる超人的な空手を駆使するヒーローではない。
だからこそ、終盤にいよいよ炸裂するスコット・アドキンスの修羅場ワンオペに目を見張ってしまう。
華麗なソバットを連発するより、飛びつき腕ひしぎ逆十字を優先!
優雅さより泥臭いリアルなCQB仕草を披露している。
ハンドガンとナイフを同時に構え、静かに屠るファイトスタイルは俺が中学二年生だったら確実に影響を与えていたに違いない。
一辺倒になりがちな中規模アクション映画の枠で、表現の多様性をアドキンスなりに追っているのが伺える。
これも製作側もアドキンスも、ジャンル映画の持つ可能性を信じているからこそなせる業だろう。
彼らが送る緊迫したリアルタイム修羅場アクションは、サブスクにも劇場公開にも決して負けてはいない。
ビデオスルーなのもあり、なかなか大層な肩書を持つ評論家なんかに語られる機会が少ないであろう本作。
語れよ!おい‼︎という話ではあるが、一介の映画を観ている身としては本作の心意気は買っていきたい。
ともあれ未見の人は是非、本作でアドキンス始めをキメて欲しい。
文:DIEsuke