派手なアクションに頼らない重厚な人間ドラマ
『アベンジャーズ/エンドゲーム』の感動にひたりながら、改めて思ったことは、本作は前作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(2018年)の続編ではあるけれど、決して“インフィティ・ウォーの後編”ではなかった、ということです。当初は『インフィニティ・ウォー』と『エンドゲーム』は「インフィニティ・ウォー PART1・2」として2部作で公開されると言われていたのですが、結果それぞれが独立した映画として公開されたわけです。
『エンドゲーム』はサノスとの戦いにヒーローたちが敗北した後の世界の話です。つまり“インフィニティ・ウォー”なる戦いはもうすでに終わっており、「インフィニティ・ウォーPART2」ではないのです。『インフィニティ・ウォー』→『エンドゲーム』の関係は、スター・ウォーズで言えば『帝国の逆襲』(1980年)→『ジェダイの帰還』(1983年)というよりも、『シスの復讐』(2005年)→『新たなる希望』(1977年)の方が近いかもしれません。
もう一つ『エンドゲーム』においてインフィニティ・ウォーが過去のものになっている、と思った理由は、すでに“サノスを倒すこと”がヒーローたちの動機ではなかったことです。あくまで世界を元に戻せるか? が重要なポイントです。したがって、本作はいわゆるヒーローVSヴィランのバトル・アクシヨンがメインではありません。世界をとりもどすために右往左往するヒーローたちの姿が描かれます。
テーマはとてもシリアスなのに、ここがすごくコミカルに描かれ、またユーモアいっぱいの会話も健在です。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の魅力は、こうしたヒーローたちの人間力にありますから、アクションの見せ場に頼らなくてもタップリ楽しめます。
この壮大な英雄神話が気づかせてくれる、3つの大事なこと
では地味な映画か? とんでもない。クライマックスの壮絶なアクションは、これぞ! これぞ! これぞ! ヒーロー映画の醍醐味! こういうのが観たかった! と言わしめるカタルシス! 鳥肌ものです。こうなることはわかっていました! でも、それでも、震えがくる。
予告編で一切このシーンを出さなかった理由もわかります。このシーン、ちょっとでも見せたらネタバレ。そして映画館でまっさらな状態で観てほしい、という製作者たちの気持ちがすごく伝わりました。ドラマとアクション、シリアスさとユーモア、各キャラクターたちの見せ場、今までのMCUで語られていたさりげない伏線の回収。とてもバランスよく、MCUの集大成にふさわしい傑作に仕上がっています。
しかし、この3時間の英雄神話が“よくできたエンタテインメント”の枠を超えて僕らの心に響いてくるのは、とても大切なことに気づかせてくれるからです。映画をご覧になった方は、本編において3つの言葉がよく出てくることに気付くでしょう。
1つは「可能性があるなら」。そう、ヒーローたちはわずかな可能性でも世界を救えるのであれば、そこに懸けてみようと思います。もうひとつは「前に向かって進むしかないんだ」。可能性と前進だけが絶望を乗り越えられる手段なのです。そして3つ目は「家族」です。ヒーローたちはサノスによって引き裂かれた、すべての“家族”のために立ち上がるのです。この宇宙で家族より大切なものはないのだから。
なんとベタ! でもフィクションだからこそ、ストレートに描ける・伝えられる、とてもとても大切なこと。3時間にも及ぶ壮大なヒーローたちの大冒険は、大いなる人間賛歌だったのです。
文:杉山すぴ豊
『アベンジャーズ/エンドゲーム』は2019年4月26日(金)より公開
https://www.youtube.com/watch?v=JWSBkLHR_OU
『アベンジャーズ/エンドゲーム』
人類半減、アベンジャーズ崩壊…。
最後に残されたのは、最強の絆。
制作年: | 2019 |
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監督: | |
出演: |