ありそうでなかった「学園×友情×悪魔祓い」
マブダチの悪魔祓い……? よく意味が分からないが、物語の内容はなんとなく察しがついてしまうという不思議なホラーコメディが、Amazonオリジナル映画『ベスト・フレンズ・エクソシズム』だ。
主人公は、青春真っ盛りのティーン少女アビーとグレッチェン(2人ともボーイ・ジョージのファン)。アビーを演じるのは、大ヒット青春コメディ『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』(2018年)で等身大の少女を好演していたエルシー・フィッシャー。本作でも相変わらずニキビに悩み、イケイケな同級生たちに引き気味の高校生だ。グレッチェンを演じるアマイア・ミラーは、『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』(2017年)で猿たちと交流していた謎の少女、と言えばピンとくるだろう。すっかり成長していてビックリ!
ただし本作の舞台は現代でも近未来でもなく、シンセ鳴り響く黄金の80年代(※イメージです)。しかもアビーとグレッチェンは友人たちの前では堂々と交際していて、校内で男子とイチャつく友達を冷ややかに見つめている、そんな関係だ。
湖畔の女子会で何が起こったのか? 予想外の展開に目がテン
女子だけで週末に遊びに行った湖畔のロッジで、降霊術を行うウィジャボード(コックリさん的なもの)に興じたアビーたち。そこに友人マーガレットの彼氏ウォレスが乱入し、彼の持参したドラッグをキメることに。その勢いで恐ろしい噂のある廃山小屋に侵入するが、それからというものグレッチェンの様子が明らかにおかしくなり……。
顔色は青白く、言葉づかいも荒々しくなっていくグレッチェン。いきなり大量のゲロを吐き、教室内で放尿し、重度の麻薬中毒者のような見た目になるなど、これまで我々が散々ホラー映画で見てきた「悪魔、憑いてます!」な状況に陥っていく。それでも「毎晩あいつが来る。ずっと監視されてる」と怯えながら告白したグレッチェンを救おうと、意を決してアビーが悪魔祓いに挑戦!……と思いきや、壮大な勘違いをかまして友情に亀裂が入り、マブダチたちの心はバラバラになってしまうのだった。
青春ホラコメだけあって基本的に事態は校内から逸脱しないのだが、憑依されたグレッチェンが企てる“悪魔トラブル”の描写はなかなかのエグさ。さらに中盤過ぎからは軽薄な80年代設定が活きてきて、意外すぎるキャラクターが(非常に軽薄に)大活躍するものだから、どんどん目が離せなくなっていく。
青春ホラー“脳筋”コメディ!?
悪魔憑きホラーのはずなのに、鑑賞後には「カラダ鍛えようかな……」と思わされなくもない、脳筋コメディな側面もある本作。メインキャラの個性や関係性などは王道青春ドラマに倣っているが、キャストを必要最小限にすることで物語のテンションを維持し、それが全体の予算を抑えることにも繋がっている(と思う)。
1988年を舞台にしていながらカルチャー・クラブをフィーチャーしているのには何かしらの意図があるのか気になるし(1986年時点で活動が停滞していた)、強めのホラーファンにとっては物足りない部分も多々あるかと思うが、ホラーが苦手でも余裕で観られるコメディとして、週末のお泊まり会なんかで観るにはもってこいの映画である(ただし16歳から!)。
『ベスト・フレンズ・エクソシズム』はPrime Videoで独占配信中
『ベスト・フレンズ・エクソシズム』
1988年を舞台にした、ダークでユーモアあふれるホラー・スリラー作品。ティーンエージャーのアビー(エルシー・フィッシャー)とグレッチェン(アマイア・ミラー)は親友同士。2人はグレッチェンの体を乗っ取った別世界の悪魔と闘う。
監督:デイモン・トーマス
原作:グラディ・ヘンドリックス
脚本:ジェナ・ラミア
出演:エルシー・フィッシャー アマイア・ミラー
レイチェル・オグチ・カヌ キャシー・アン クリス・ローウェル
制作年: | 2022 |
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