巨匠スピルバーグの処女作にして代表作のひとつ!
『JAWS/ジョーズ』(1975年)『未知との遭遇』(1977年)『インディ・ジョーンズ』シリーズ(1981年~)『ジュラシック・パーク』(1993年)『プライベート・ライアン』(1998年)、そして『レディ・プレイヤー1』(2018年)……代表作を挙げれば枚挙にいとまがないが、50年近くにわたってハリウッドに君臨してきたスティーヴン・スピルバーグは、まさに巨匠と呼ぶにふさわしい映画人である。
そんな巨匠の処女作と言われている『激突!』は1971年にテレビ映画としてアメリカで公開され、あまりの面白さに日本を含む海外では劇場公開されたというからスゴい。原作はSF/ホラー作家のリチャード・マシスンによる短編で、彼は本作で脚本も担当。誰にでも起こりうる恐怖を説得力をもって実写化できたのは、マシスンの手腕によるところも大きいだろう。
その脚本を臨場感たっぷりのスリラー映画に仕上げてみせたスピルバーグは、当時まだ二十代半ばだったのだから驚きだ。主人公のセールスマンが乗る赤い旧車(クライスラーのプリムス・ヴァリアント)の主観映像で始まる演出センスはいま観てもかなり新鮮だし、開始5~6分で早くも恐怖展開のきっかけをぶっ込んでくるサクサク展開も見事。テレビ映画ということで、視聴者を飽きさせない演出を心がけていたのかもしれない。
『激突!』を部屋でゴロ寝鑑賞できる幸せを噛みしめよ!
危険運転にイラついた主人公が追い越したトラックが、どこまでも執拗に追いかけてくる……。「なんかトラックに追われる映画らしいよ」という前情報だけでここまで恐怖を煽るのもすごいが、実際そうとしか言いようがないシンプルな内容もすごい。低予算だけに最小限の情報と演出で構成されていて、舞台になるのも道路以外はガソリンスタンドとダイナーくらい。しかも、トラックの運ちゃんは最後まで足元と手元しか映らないのだ。
映画界、特にアクション映画では便利なガヤ扱いされている“大型トラックの運ちゃん”を、こんなにも恐ろしく描いた映画がいまだかつてあっただろうか? 車に乗っていない状況でも疑心暗鬼になってしまう主人公と同じく、ダイナーでダベっている地味なおっさんがサイコパスのように見えてくるから不思議である。画面には終始砂埃が舞いまくっているし、観ていて喉がめちゃくちゃ渇いてくるので要注意だ。
ともあれ、近年のサスペンス映画に大いに影響を与えたスピルバーグ監督の『激突!』は、なんとな~くゴロ寝しながら鑑賞したい名作。主人公がダイナーで「アスピリンくれる?」とウェイトレスのおばちゃんに尋ねるシーンとか、子どもの頃に観て妙に記憶に残ってるなぁ……なんていう人も、この機会に改めて鑑賞してみては?
『激突!』
「『激突!』は機械への批判だ。僕は早い段階で、この映画のすべては技術社会全体が完全に崩壊したことを描くことだと心に決めていた」スティーヴン・スピルバーグ!
制作年: | 1971 |
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