アイドル並みの大人気トニー・レオン!
第27回釜山国際映画祭(BIFF)が2022年10月5日から14日まで、韓国・釜山市で盛大に開催された。BIFFはアジアを代表する映画の祭典だが、海外からのゲストやプレスが参加し、通常通りの形で開催するのは3年ぶり。メイン会場である“映画の殿堂“を中心に16万人以上の観客を集め、コロナ禍以前の賑わいを取り戻した。その中から、いくつか目立ったイベントをピックアップしてお伝えしよう。
開幕式のレッドカーペットには、『ベイビー・ブローカー』(2022年)の是枝裕和監督とソン・ガンホ、『コネクト』(原題/2022年12月よりディズニープラスで配信予定)の三池崇史監督とチョン・ヘインという日韓合同プロジェクトの顔をはじめ、ハン・ジミン、パク・ヘイル、ピョン・ヨハン、テギョン(2PM)、シン・ハギュン、クォン・ヘヒョ、MCのリュ・ジョンヨルとチョン・ヨビン、ニューカレンツ部門の審査員である加瀬亮らが登場。
さらにNetflix『イカゲーム』(2021年)で人気者となったドクス役のホ・ソンテとミニョ役のキム・ジュリョンは、それぞれ新作映画の顔として華やかな姿を見せた。
しかしなんと言っても人気の的だったのは、“今年のアジア映画人賞”に選ばれた、トニー・レオン! 香港映画界を代表するスターであり、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021年)でハリウッド進出も果たしたトニー。『ミナリ』(2020)でアメリカ進出を果たしたハン・イェリがトニーを讃える詩を朗読した後、本人が登壇。大喝采を浴びた。
2004年以来の参加となったBIFFでは、自ら選んだ『花様年華』(2000年)、『インファナル・アフェア』(2002年)、『2046』(2004年)など出演作6本の上映や、公開トークショー、Q&Aも行われ、ファンを大いに喜ばせた。
トニーは記者会見で、「釜山がすっかり変わり、摩天楼ができていて驚きました。でも、暖かく迎えられて嬉しい。以前は、靴が脱げるほどもみくちゃにされましたが」と笑った。また、現在日本でリバイバル・ヒット中で、韓国でも人気の高い『恋する惑星』(1994年)が自選6本に含まれていない理由を聞かれると、「それだと全部ウォン・カーウァイ監督作品ばかりになってしまうので、違う監督の映画も選びました」と深い意味はない様子。はにかんだように笑う姿は、還暦を迎えたとは思えないが、韓国での人気は未だアイドル並みで、映画祭特製トニー・グッズは軒並み売り切れ。どのイベントも大盛況だった。
カン・ドンウォンやパク・ウンビンも登場!
BIFFはファンとの交流イベントがいくつもあるが、今年はトーク企画<アクターズ・ハウス>が新設され、ハン・ジミン(『私たちのブルース』[2022年])、カン・ドンウォン(『ベイビー・ブローカー』)、ハ・ジョンウ(『ナルコの神』[2022年])、イ・ヨンエ(『調査官ク・ギョンイ』[2021年])が、じっくりと自分の俳優人生を語った。
中でも釜山出身のカン・ドンウォンは特に人気を集め、さらに日本からのファンも大勢詰めかけていた。ドンウォンはこの20年、ほとんど映画のみにキャリアを絞ってきたが、「2時間では描ききれない題材もあり、良い作品と出会えればドラマ出演もあり得る」と可能性を語った。
トニー・レオンもドラマ出演の意向を示していたが、映画祭側も配信作品の一挙上映部門を新設するなど、変化に対応している。劇場用映画以外の作品を表彰する<アジア・コンテンツ・アワード>も行われ、大ヒット・シリーズ『D.P. -脱走兵追跡官-』(2021年)のチョン・ヘインが司会を担当。Netflix『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(2022年)が作品賞と、主演のパク・ウンビンが女優賞に輝き二冠を達成。ウ・ヨンウ役では地味な服装の多かったパク・ウンビンが、ゴージャスな金色のドレスで登壇すると会場がどっと湧き、「ウ・ヨンウとして最高の時間を過ごすことができました」と笑顔を見せた。
また、日本から鈴木亮平が『TOKYO MER~走る緊急救命室~』(2021年)で男優賞を受賞、こちらも流暢な英語で挨拶していた。
大ヒット作『イカゲーム』がパク・ヘスの助演男優賞と技術賞のみに終わったのは意外だったが、すでに大成功を収めてしまったコンテンツより、さらに伸び代のあるものを重視した結果かもしれない。また日本のNiziUも歌を披露した。
閉幕式にはクロージング作品『ある男』(2022年)の妻夫木聡、安藤サクラ、窪田正孝も登場。他にも10日間の期間中、映画祭関連イベントが目白押しだったが、これは釜山市が2030年の万博誘致を目指していることとも連動している。映画祭終了後の15日に行われた、BTSの<Yet To Come in BUSAN>コンサートもその一環。10月13日は釜山出身のBTSメンバー、ジミンの誕生日ということもあり、ラッピングバスが走るなど、こちらも大変な盛り上がりぶりだった。とはいえ、私などはチケットがとれず、すごすごと看板を見るだけで帰国したのだけど。
韓国エンタメがここ数年、世界を席巻しているのはご存知の通りだが、韓国国立映画アカデミー(KAFA)をはじめ長い時間をかけて人材育成をしてきたことが大きい。その基地となっているのが釜山なのだ。
取材・撮影・文:石津文子