90年代のNYで受けたカルチャーショック
どうもアニです。
ニューヨークのストリートカルチャーのドキュメンタリー映画『All the Streets Are Silent:ニューヨーク(1987-1997)ヒップホップとスケートボードの融合』を観ました。
80年代後半から90年代中頃までのニューヨークのヒップホップとスケートボードカルチャーが、その後のストリートカルチャーにどう影響を与えたかを探る作品です。
自分は若い頃にこのカルチャーに触れて、モノ凄い影響を受けてしまい今に至るという感じの人間なので、たいへん面白かったです。というのも初めて行った外国がニューヨークで、東京より全然都会に思えて、見るモノ聞くモノ全てが刺激的でカルチャーショック半端なかったんです。
当時<ニューミュージックセミナー>というニューヨーク中を使って行われていた音楽の祭典に、そのとき所属していたレーベル<Major Force>の一員として参加するため、1990年にニューヨークに行ったんですよ。
ライブもやったりしたんだけど、現地に着いてすぐで何もわかってない状態で。そのときの体験は本当にデカかったです。なので自分の中では特別な街だったりします。
1990年5月5日に「スチャダラ大作戦」が出ました。
— SDP ANI (@SDP_ani) May 5, 2020
当時のライブ用インスト盤。 pic.twitter.com/34UDhIbG4p
そんな憧れの街のストリートカルチャーが、どんな風に生まれてどう発展していったのかを描くドキュメンタリーなんて、好物でしかないです。
80~90年代NYのヒップホップ事情
この映画ですが、まずは80年代後半からずっとビデオを回してたのがスゴい。スケボーのシーンとかクラブの様子とか、貴重な資料映像がこれでもかというくらい出てきます。当時の街の感じとか空気感が感じられてとても良いです。
80年代後半頃のニューヨークではヒップホップがかかるクラブが無かった、という話も興味深いです。その頃は“ヒップホップは怒りの音楽だからヒップホップをかけると暴力沙汰が起こる”という理由で敬遠されて、クラブでかかるのは主にハウスミュージックだったらしいです。
それでも、当時ニュースクールと呼ばれていたジャングル・ブラザースやデ・ラ・ソウル、ア・トライブ・コールド・クエストなど、後にネイティブ・タンと呼ばれるグループとかが暴力的じゃないヒップホップをやるようになった影響もあり、徐々にヒップホップのかかるクラブも増えていったらしいです。
https://www.youtube.com/watch?v=VhTa1q0mqdg
その中心にあったのが<マーズ>というクラブで、関係者へのインタビューは当時の様子がよくわかってとても面白かったです。オーナー、日本人だし。後に有名になるDJとかがレギュラーで回してたりとか。
マーズのレジデントDJだったクラーク・ケントとかは、芝浦にあったクラブ<GOLD>に来たりしてたんだけど、DJがマジでスゴくてビックリした記憶アリ。ヒップホップを基本に、いろんなジャンルの曲を混ぜてDJするスタイルがモノ凄いカッコよくてショックを受けました。そのとき貰ったミックステープは擦り切れるまで聴きました。
In Tokyo with reggae fusion artist Snow (2nd from right) and DJ Clark Kent (right). Snow received the Recording Industry Association of Japan's 1994 Gold Disc Award for Best New Artist and performed his hit single "Informer" on NHK TV Japan. pic.twitter.com/9SJB4ypOYr
— Muhammad Abdulsalaam (@DjCurtisHarmon) July 16, 2019
過去のヒップホップ関連映画/ドラマともリンク
マーズのレギュラーDJだったストレッチ・アームストロングは、相棒のボビートとやってたラジオ番組(The Stretch Armstrong & Bobbito Show)がスゴい人気だった。当時、東京でもラジオ番組のテープが出回ってたくらい。ラジオにゲストで来たラッパーたちのフリースタイルを集めたレコードとかもありました。
この2人のラジオ番組は『ストレッチ&ボビート:人生を変えるラジオ』(2015年)というドキュメンタリー映画があったりするくらい。ちょっと前までNetflixで見れたんだけど、もう配信してないみたいで残念。
この映画でもバスタ・ライムスが初めてストレッチたちのラジオに出たシーンがあるんだけど、そのバスタの後ろにKurious(キュリオス)っていうラッパーが映ってて、ちょっと上がる。アルバム1枚しか出してないけど、結構いい作品です。
前に紹介したウータン・クランのドラマ『ウータン・クラン:アメリカン・サーガ』(2021年)の中でも、このラジオでどうにか自分たちの曲をかけてもらおうと奮闘する場面があって、苦労の末ラジオでかかってみんなで大喜びする、というとてもいいシーンがありました。
『KIDS』やSupreme好きも必見! ノスタルジーと現実のほろ苦さ
あとニューヨークのスケーターってかっこいいですね。スケボーって基本舗装されたところじゃないとできないのでとても都会的だし。街の中で危険も顧みずに滑ってる姿はとてもカッコイイ。
ギリギリ危ない、みたいなシーンもあったけど本当に轢かれてたりとかするんだろうな、と見てて思いました。ニューヨークのラジオってずっとヒップホップが流れてたりするから、ニューヨークのスケーターがヒップホップ聴くのは自然というか、普通のことなんだろうな。ヒップホップアーティストも身近な存在だろうし。
90年代中頃の丁度いろんなタイミングがピッタリあって、後に世界のカルチャーを席巻することになったんだろうと、この映画を観てあらためて思いました。
それと、映画『KIDS/キッズ』(1995年)の主人公の現在の姿が見れて、ちょっと嬉しかった。でも、この映画のおかげで人生が狂っちゃった人とかもいて、ちょっとほろ苦いです。『KIDS』は公開された時にニューヨークにいたので公開直後に見た思い出。
小ネタとしてはSupremeのロゴの元ネタとかも出てきます。音楽をラージ・プロフェッサーがやってるのもいいんですよ。ラージ・プロフェッサーの話はしだすと多分長くなるので、また別の機会に。それにしても、とてもいい映画でした。じゃあ、またまた。
文:ANI(スチャダラパー)
『All the Streets Are Silent:ニューヨーク(1987-1997)ヒップホップとスケートボードの融合』は2022年10月21日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開
『All the Streets Are Silent:ニューヨーク(1987-1997)ヒップホップとスケートボードの融合』
1980年後期のニューヨーク。アンディ・ウォーホールやジャン=ミシェル・バスキアたちの時代が終焉を迎え、そこに空いた穴を埋めるかのようにヒップホップとスケートボードという2つのサブカルチャーが頭角を現し始める。当初ヒップホップは黒人の物、スケートボードは白人の物というイメージが強かったが、当時では珍しくヒップホップを流すクラブMarsのオープンから、Wu-TangClan、Nasやノトーリアス・B.I.G.などのラッパーの誕生、映画『KIDS/キッズ』の公開、スケートブランドZooYorkやSupremeのローンチなどを経て、ライフスタイルが似ていた両者の文化は次第に交わり、ラッパーがスケートブランドで着飾るように、スケーターがヒップホップを聴くようになる。そして、不良と呼ばれていた若者たちの生き様が、今では世界的に最も影響力のあるストリートカルチャーを作り上げた。
監督:ジェレミー・エルキン
音楽:ラージ・プロフェッサー
出演:ロザリオ・ドーソン キース・ハフナゲル
ダリル・マクダニエルズ(Run-D.M.C.)
ストレッチ・アームストロング ボビート・ガルシア
制作年: | 2021 |
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2022年10月21日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国公開