“日勤”吸血鬼ハンターはつらいよ!?
『グレイマン』に続いて、またしてもNetflixからアクションの快作が届いた。タイトルは『デイ・シフト』。
ジェイミー・フォックスが演じる主人公バドの表向きの仕事はプール清掃業。別れた妻と娘にもそう言ってきた。が、その“本業”はヴァンパイア・ハンターなのだった。ん、吸血鬼は太陽の光に弱いのになんで『デイ・シフト』? そのあたりが物語のポイントにもなってくると言っていい。
夜の闇、妖しさと不気味さと格調の高さといった吸血鬼ものの定番はあっさり捨てて、この映画は猛スピードでアクションとバイオレンスを叩きつけてくる。ハンターが仕事になる(ハンター組合もある)くらいなので、ヴァンパイアの数も大量。バトルシーンは物量戦の様相でもある。なおかつヴァンパイアたちはいくつかの種族に分かれており、その特徴や“ファイトスタイル”も異なる。
そんな敵に銃をぶっ放し、取っ組み合い、殴って蹴って首を切り落としたら勝利(ヴァンパイアの死亡)確定。必然的にアクションの残酷度は高くなるわけだが、なおかつそれがどこかコミカルなところは80年代ホラーっぽい楽しさだ。
銃で撃たれて投げられて、もの凄い勢いで吹っ飛ぶワイヤーアクション、カーチェイスはドローン撮影が縦横無尽、格闘シーンではカポエラ風の蹴りにプロレス技も。最強の助っ人として登場するスヌープ・ドッグの武器も見もの。それって他の映画でも有名なアレだよね、その映画ってジェイミー・フォックスの主演作のタイトルじゃ……といった小ネタも楽しい。
『ジョン・ウィック』のチャド・スタエルスキ製作! スピンオフもあるか!?
ヴァンパイアハンターたちは狩りの賞金ではなく、獲物の牙を換金して稼ぐ。そうした設定に加え、主人公バドは娘の学費を稼ぐために狩りまくる。正義vs悪ではなく、誰もが個人的な気持ち最優先。ヴァンパイア狩りも大事だけど、娘の送り迎えもしなきゃいけない。
そんな中で、ハンター組合のデスクワーク係だった堅物セス(デイヴ・フランコ)も、バドのお目付役として行動するうちに変化していく。終盤の変化は文字通り劇的で、それがまた映画のノリを1段階アゲてくれるのだ。さらに、ハンター仲間であるナザリアン兄弟(スティーヴ・ハウイーとスコット・アドキンス)の暴れっぷりも完全に最高。「これスピンオフあるな」という感じだ。
難しいことは何にもなし。しかし、ストレスなく映画を楽しみ「うわっ!」とか「おー!」と言わせるためのこだわりや工夫は大変なものだ。製作陣には『ジョン・ウィック』シリーズ(2014年~)を監督したチャド・スタエルスキの名前も。これが初監督となるJ・J・ペリーもスタント出身だ。
娯楽映画は、よく「人間が描けていなければ」という批評もされるわけだが、アクション映画がまず力を入れるべきはアクションだろう。アクションが快調だから、ドラマ部分にも乗っていけるということが実際にある。圧倒的テンポの『デイ・シフト』もそう。気づいたら登場人物たちのことが大好きになっている。続編とスピンオフ、ぜひ。
文:橋本宗洋
Netflix『デイ・シフト』独占配信中
『デイ・シフト』
近頃は、生計を立てるのも命懸け!? ロサンゼルスを拠点に活動するバンパイアハンターは、1週間以内に子供の授業料と歯列矯正の費用を捻出しなければならなくなり……。
監督:J・J・ペリー
出演:ジェイミー・フォックス デイヴ・フランコ
ナターシャ・リュー・ボルディッゾ ミーガン・グッド
カーラ・ソウザ スティーヴ・ハウイー
スコット・アドキンス オリヴァー・マスッチ
スヌープ・ドッグ エリック・ランジュ
ピーター・ストーメア ザイオン・ブロードナックス
制作年: | 2022 |
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