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竹内涼真&横浜流星“炎×氷”競演!『アキラとあきら』 二人の眼力対決が「半沢直樹」のカタルシスを超える!?

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ライター:#加賀谷 健
竹内涼真&横浜流星“炎×氷”競演!『アキラとあきら』 二人の眼力対決が「半沢直樹」のカタルシスを超える!?
『アキラとあきら』©2022「アキラとあきら」製作委員会

原作・池井戸潤! 二人の“AKIRA”の物語

池井戸潤の小説作品を原作に、竹内涼真横浜流星が、同名の主人公を演じる映画『アキラとあきら』が、2022年8月26日(金)から全国公開される。

見事な佇まいを印象づける竹内の演技はさることながら、ひとりの俳優の演技を形作るあらゆる要素を完全にコントロールする横浜の精悍な表情と存在感も目を引く。私たち観客は、つい先頃、横浜が『流浪の月』(2022年)で俳優としていよいよ前人未到の域に入ろうとする瞬間をあらゆる場面、その画面の節々に確認することができた。彼が演じた中瀬亮というキャラクターの非常にショッキングな暴力性には、文字通り肌寒い恐怖すら感じた。

冒頭場面。走行中の車窓から主人公・階堂彬(横浜流星)が海を見つめている。次に滑らかな走行スピードの車外に切り替わり、彬が窓際で送る視線が捉えられる。彼のさりげない視線を車内と車外から捉えたこのふたつのショットがあるだけで、本作はすべてに映画として完結しているような、そんな印象を与える。

『アキラとあきら』©2022「アキラとあきら」製作委員会

改めて横浜流星は、“視線の俳優”だ。彬が様々な場面で眼前の対象へ注ぐその視線が、本作の重要な軸になっている。同時に、この視線が階堂彬の精悍なキャラクター性を規定してもいる。横浜は役柄についての情報を観客が瞬時にキャッチできるように、冒頭場面の僅かなショットの内で、視線を抑制し、巧みにコントロールする。

※物語の内容に一部触れています。ご注意ください

冷静な横浜流星と情熱の竹内涼真

階堂彬と同名であるもうひとりの主人公・山崎瑛を演じるのは竹内涼真。横浜が視線の俳優なら、竹内は眉間の俳優といったところか。ドラマ『六本木クラス』(2022年:テレビ朝日系)でも顕著だが、彼の圧倒的な高身長と独特な眉間の演技が、本作では特に稀有な佇まいとして深い陰影を生んでいる。

『アキラとあきら』©2022「アキラとあきら」製作委員会

涼やかでクールな横浜の視線と、竹内のより人間的で泥臭い眉間が、非常に鮮やかな好対照である。この決定的な持ち味の違いから、ふたりの“AKIRA”が見事に配役されている。彬も瑛も、ともに産業中央銀行に同期トップの成績で入行した逸材。かたや大企業の御曹司、かたや倒産した町工場の息子で、生まれも育ちもまるで異なるふたりである。

『アキラとあきら』©2022「アキラとあきら」製作委員会

彬が海を見つめる冒頭のショットからも明らかなように、彼は非常にクールな性格で順調にバンカーとしてのキャリアを築くのに対し、人情に厚く、情にほだされやすい瑛は、左遷を覚悟で上司に食い下がる。彬の冷静さと瑛の情熱が均衡を保ちながら、時に互いを補完し合うことになるのが、本作の物語の白眉。横浜流星と竹内涼真という日本映画界のエース・ランナーの図式が、そのまま物語世界でも素描されたかのような構造である。

『アキラとあきら』©2022「アキラとあきら」製作委員会

『半沢直樹』を超えるカタルシス!? 横浜流星の衝撃○○○シーン

新しい役柄が、その都度挑戦的なアプローチを可能にし、画面上に何かしらの爪痕を残すストイックな意気込み。それが横浜の主演映画を観ることのスリリングな体験である。本作での階堂彬役が、その期待に応えてくれるのは、ここ最近の横浜が連続して演じる“流浪の民”的役どころにも、観客の関心を惹き付ける要素が隠されている。

彬は、家業である「東海郵船」跡取りの座を継ぐことを拒否し、バンカーを目指した。だが、彼の心には、ほんとうの家族の繋がりを求めているが故の虚しさがある。『流浪の月』の亮もまた確かな母性を求めながら、恋人に暴力を振るう悲しき人物だった。

『アキラとあきら』©2022「アキラとあきら」製作委員会

東海グループは、いまや身内のいざこざで瓦解寸前。社長の座に就いた弟・龍馬(高橋海人)との兄弟間の軋轢も解消できない。家業と家族崩壊の大きな壁を前に彬は、瑛の助けを借りながら打開策を探ることになる。本作での横浜は、そうした共同体の輪から外れた“流浪の民”として、物語全体を貫く回復と解放の役回りを担っているのだ。

『アキラとあきら』©2022「アキラとあきら」製作委員会

原作が池井戸潤だけあって、『半沢直樹』よろしく豪華な顔ぶれの名優陣たちが多彩な顔芸を披露することが期待されるが、今回ばかりはそれが清々しく裏切られることになる。言葉(台詞)すら無用な二人の演技が、本作では何よりも雄弁に、無音のうちに機能することになるからだ。

流浪の民としての横浜が、本作のクライマックスで見せることになる土下座には心底胸を打たれた。結末に触れるので詳述は避けたいが、池井戸原作の映像作品を振り返れば、この土下座がどれだけ重要な意味を持ち、数々の名場面を生み出してきたかは、いまさら指摘するまでもない。

『アキラとあきら』©2022「アキラとあきら」製作委員会

ただし、本作での横浜の土下座は、あの半沢直樹のそれよりも、強固で、何か決定的な意味合いを持っていると思う。共同体を再建(回復)しようとする彬の土下座には、半沢のような苦渋も憤りもなく、ただただ爽快な決意に満ちている。それが結果として、物語に痛快なカタルシス(解放)を付与する。けれど、何よりここで見逃せないのは、流浪の民としての物語を解放した先に、横浜流星が歌舞伎役者顔負けの眼力で見得を披露する視線の演技だ。それは、横浜流星の土下座の勝利、いや視線の勝利だった。

文:加賀谷健

『アキラとあきら』は2022年8月26日(金)より全国公開

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『アキラとあきら』

父親の経営する町工場が倒産し、幼くして過酷な運命に翻弄されてきた山崎瑛〈アキラ〉。大企業の御曹司ながら次期社長の椅子を拒絶し、血縁のしがらみに抗い続ける階堂彬〈あきら〉。運命に導かれるかのごとく、日本有数のメガバンクに同期入社した二人は、お互いの信念の違いから反目し合いながらも、ライバルとしてしのぎを削っていたが、それぞれの前に〈現実〉という壁が立ちはだかる。〈アキラ〉は自分の信念を貫いた結果、左遷され、〈あきら〉も目を背け続けていた階堂家の親族同士の骨肉の争いに巻き込まれていく。
そして持ち上がった階堂グループの倒産の危機を前に、〈アキラ〉と〈あきら〉の運命は再び交差する――

監督:三木孝浩
原作:池井戸潤「アキラとあきら」(集英社文庫刊)
脚本:池田奈津子

出演:竹内涼真 横浜流星
   高橋海人 上白石萌歌 児嶋一哉 満島真之介
   塚地武雅 宇野祥平 戸田菜穂 野間口徹
   杉本哲太 酒井美紀 山寺宏一 津田寛治
   徳重聡 矢島健一 馬渕英里何 山内圭哉
   山村紅葉 竹原慎二 アキラ100%
   奥田瑛二 石丸幹二 ユースケ・サンタマリア
   江口洋介

制作年: 2022