あの人気マンガの実写映画『キングダム』の見どころを解説! ……と思ったんですが、多彩な登場人物に触れるだけで文字数が大変なことになってしまったので、魅力的なキャスト陣の紹介メインでご勘弁ください! 原作ファン目線で結論を言ってしまうと、正直なにも文句ありません!!
全員イケメン! 多くのマンガ原作キャラを演じてきた若手が集う
時は紀元前、戦国時代の中国を舞台に、天下の大将軍になることを夢見る少年・信と、前人未到の中華統一を目指す秦国の若き王・嬴政の友情から始まる、覇道への果てしない挑戦を描く『キングダム』。現在も<週刊ヤングジャンプ>にて連載中の人気マンガが原作で、このたび映像化されたのはコミックス1~5巻(途中まで、いわゆる信の黒目小さい期)の“王弟反乱編”に当たるお話だ。
さて、主演の山﨑賢人はマンガ原作の実写作品に出まくっているだけあって、バカで無鉄砲だが真っ直ぐな正義感と華奢な体に秘めた底力を発揮する信が、まるで憑依したかのような熱血ぶり。そんな信と運命的な出会いを果たす、後の始皇帝・嬴政(エイセイ)/信の幼馴染み・漂(ヒョウ)の二役を演じた吉沢亮も、人類最高クラスのルックスが醸し出す“やんごとなきオーラ”に跪きたくなるレベル。
そして王宮でクーデターを起こした嬴政の弟・成蟜(セイキョウ)を演じた本郷奏多も、これまで『鋼の錬金術師』や『アカギ ~鷲巣麻雀完結編~』などのマンガ実写化作品で鍛えた憑依メソッドを発揮している。単なるイケメンとは一線を画す、ガチで性格の悪そうな人相をフルに活かしたクズっぷりが本気でムカつくので最高。
不安要素だったブッ飛び系キャラもベテラン俳優が見事に演じきる
見た目以外にも色々と人間離れしている大将軍・王騎(オウキ)は原作ファンがもれなく心配していたキャラだが、まさかの大沢たかおが大幅な肉体改造で強引に演じきり、それはそれで異様な王騎になっていたのが嬉しい驚きだった。ちょびヒゲの側近・騰(トウ)を演じる要潤も、おなじみの“ファルファル”描写こそなかったもののイケメン度が強調されていて鼻血モノだ。
さて気になる女性陣だが、まず少女軍師・河了貂(カリョウテン)を演じた橋本環奈はかなりのハマリ役。『銀魂』など他作品でもおきゃんなキャラクターを演じてきた橋本だけに、性別不詳なテンの可愛らしさをしっかり表現している。山﨑とは『斉木楠雄のΨ難』などで共演済みなので息もピッタリ。
そして、果たして誰が演じることになるのか(勝手に)議論されてきた山の民の王・楊端和(ヨウタンワ)を演じるのは、長澤まさみ! ……なんだろう、この安心感。現在31歳の長澤はまさに油が乗りきっていて、さんざん修羅場をくぐり抜けてきた楊端和を演じる説得力も抜群。もしエキゾチックな顔立ちの若手モデルとかが演じていたら、きっと薄っぺらいキャラクターになっていたことだろう。
坂口拓、恐るべし! ホンモノの殺人鬼のようなオーラで優勝
他にも、王に次ぐ身分なのに扱いが雑な丞相・昌文君(ショウブンクン)は高嶋政宏が原作通りの暑苦しさを手堅く再現。頼りないが正義感だけは人一倍強い秦兵・壁(ヘキ)役の満島真之介は、彼自身が患っているらしいハイテンション病を封印することで好感度の高いキャラに仕上がっていた。
しかし最大の収穫は、狂気の武将・左慈(サジ)を演じた坂口拓だろう。ふてぶてしく怪しい雰囲気と、原作キャラのキャパには収まりきらない“生身で人間を殺せる男”の迫力、そして原作を改変し実質的なラスボスとなった存在感。この左慈は間違いなく劇中で一番怖い。怖すぎて作品のバランスが壊れるギリギリだ。
本作でも主演陣のアクション指導を行ったという坂口。きっと公開後には「誰、この人!?」と大騒ぎになると思われるが、あえて『地獄甲子園』(2003年)や『極道兵器』(2011年)といった主演作を観て、坂口の広すぎる振り幅に混乱してほしい。
【#キングダムな漢たち】
— 映画『キングダム 大将軍の帰還』公式アカウント (@kingdomthemovie) March 15, 2019
左慈(さじ)
/#坂口拓
王弟・成蟜(せいきょう)側に付く凄腕の剣豪。#キングダム#4月19日公開 pic.twitter.com/Do51bgZGFN
ちなみに人間離れした怪物級の敵・ランカイも見事に再現されていたのだが、実写化されたことで「もしかして『スター・ウォーズ エピソードVI/ジェダイの帰還』に出てきたランコアが元ネタ……?」と気づいてしまった。多分これ当たってるでしょ!?
2019年「続編を作らないとファンが怒る邦画」暫定ベスト!
幅広い層の観客を想定してか、いわゆる切り株系の残虐シーンをことごとく排除した実写版『キングダム』。にもかかわらず、2016年に公開された3分間の映像作品<キングダム連載10周年実写特別動画>で煽った期待を裏切らない、堂々たる歴史アクション巨編に仕上がっていた。
クイックかつダイナミックな殺陣は原作以上の迫力だし、信や嬴政が見得を切るシーンのカタルシスもバッチリ再現。キャスト的にも若年層の観客が多いとは思うが、普遍的な立身出世を描いたアクション時代劇として、ぜひベテラン映画ファンにも鑑賞してほしい作品だ。
なお今回は登場しなかった人気キャラの羌瘣(キョウカイ)だが、続編では特別動画に引き続き絶対に山本千尋をキャスティングしてほしい。日本映画界の未来を担う本格アクション女優として、山本がキングダムの世界で大暴れすることを期待しているファンは少なくないだろう。ただし原作的にコミックス6巻以降のストーリーは実写化難易度がますます上がるはずなので、映画オリジナルの展開も全然アリということで引き続き続編の検討をお願いします!!