1,パルム・ドール『逆転のトライアングル』リューベン・オストルンド監督
2,グランプリ『クローズ』ルーカス・ドン監督
3,男優賞ソン・ガンホ『ベイビー・ブローカー』是枝裕和監督
4,監督賞パク・チャヌク『Decision to Leave』
5,カメラ・ドール特別賞 早川千絵監督『プラン75』
6,受賞結果一覧
最高賞パルム・ドールに『逆転のトライアングル』富と身分によるヒエラルキーを描く
2022年5月28日夜、第75回カンヌ国際映画祭のクロージングセレモニーが行われ、最高賞のパルム・ドールはリューベン・オストルンドの『逆転のトライアングル』に授与された。オストルンドは前作『ザ・スクエア 思いやりの聖域』で2017年にパルムを受賞しており、これで2度目。ダルデンヌ兄弟、ミヒャエル・ハネケ、ビレ・アウグスト、今村昌平など、2度受賞組に加わった。(ただし、3度の受賞者はまだ出ていない)。
Ruben ÖSTLUND, lauréat de la Palme d'or pour TRIANGLE OF SADNESS (SANS FILTRE)
— Festival de Cannes (@Festival_Cannes) May 28, 2022
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Ruben ÖSTLUND, winner of the Palme d'or for TRIANGLE OF SADNESS#Cannes2022 #Palmares #Awards #PalmedOr #TRIANGLEOFSADNESS pic.twitter.com/37pT145ydc
『逆転のトライアングル』は、ファッションモデルでインフルエンサーのカップルが豪華客船に招待され、ロシアの新興富豪やイギリスの武器商人夫婦たちとクルーズに出るが、マルクス信奉者の船長(ウッディ・ハレルソン)主催の晩餐会の最中に嵐に遭遇したうえに海賊に襲われて船は大破。流れついた島で、富と身分によるヒエラルキーが逆転する、というブラックコメディ。時化で船がローリングし、乗客がゲロと糞尿まみれになるシーンはさすがに辟易したが、現代社会のゆがみを皮肉るオストルンドの視点は的確だ。
最も感動的でグランプリ受賞『クローズ』31歳ルーカス・ドン監督作
グランプリ2本のうちの1本、ルーカス・ドンの『クローズ』は、兄弟以上に離れがたく育った13歳の少年レミとレオが、相手への思いの差が決定的な事件を引き起こしてしまい…というストーリー。少年の愛と友情と成長を繊細に描き、今年のコンペで最も感動した作品だった。
2018年にある視点部門男優賞とカメラ・ドールを受賞した『Girl/ガール』にも驚いたが、『クローズ』はさらに完成された傑作だった。ルーカス・ドンはまだ31歳。恐るべき天才映画作家である。
Lukas DHONT, lauréat du Grand Prix ex aequo pour CLOSE, avec l'acteur Eden DAMBRINE.
— Festival de Cannes (@Festival_Cannes) May 28, 2022
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Lukas DHONT, award winner ex-aequo of the Grand Prix for CLOSE, with actor Eden DAMBRINE.
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是枝裕和監督『ベイビー・ブローカー』ソン・ガンホが韓国初の男優賞受賞
是枝裕和の『ベイビー・ブローカー』は、殺伐としたテーマが多かった今年のコンペで、人間の本質的な優しさを信じさせてくれる作品だった。『万引き家族』でパルムを受賞済みの是枝はカンヌではすでにスター監督。名優ソン・ガンホを中心に、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナ、イ・ジウン(IU)ら、豪華キャストを揃えた日韓期待の作品で、プレスの注目度も高かった。結果として、是枝自身への賞はなかったものの、韓国初の男優賞をソン・ガンホにもたらしたことは最高の功績となった。
パク・チャヌクが監督賞受賞『Decision to Leave』
今年はグランプリと審査員賞が2本ずつ、ダルデンヌ兄弟に75回記念賞が授与されるなど、賞の数の多い、イレギュラーな結果だったが、なかで最も納得がいったのがパク・チャヌクの監督賞だった。彼のトレードマークである凝りに凝った映像と、予想を次々に裏切っていく展開は、不眠症の刑事が容疑者の女に取り憑かれていくというシンプルなストーリーによく映えた。
PARK Chan-Wook, lauréat du Prix de la mise en scène pour HEOJIL KYOLSHIM (DECISION TO LEAVE)
— Festival de Cannes (@Festival_Cannes) May 28, 2022
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PARK Chan-Wook, award winner of the Best Director for HEOJIL KYOLSHIM (DECISION TO LEAVE)#Cannes2022 #Palmares #Awards #DECISIONTOLEAVE pic.twitter.com/H7IipAstft
早川千絵監督『プラン75』カメラ・ドールのスペシャル・メンション受賞
日本映画では、ある視点部門にエントリーした早川千絵の『プラン75』が新人監督作品を対象にしたカメラ・ドールのスペシャル・メンションを受けた。
『プラン75』は75歳以上の老人に安楽死の選択ができる制度ができた近未来の日本を舞台に、ホテルの掃除係だったミチ(倍賞千恵子)が、高齢者に冷たい社会に死の選択をするまで追い込まれていく。カメラ・ドールの審査員長のロッシ・デ・パルマがテーマの重要性を高く買っての表彰で、有望な新人監督の登場を喜びたい。
HAYAKAWA Chie, lauréate de la Mention Spéciale pour un premier film avec PLAN 75.
— Festival de Cannes (@Festival_Cannes) May 28, 2022
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HAYAKAWA Chie, award winner of the Special Mention for a first film with PLAN 75#Cannes2022 #SpecialMention #Awards #Palmares pic.twitter.com/b4feNtRsFG
受賞結果一覧
コンペティション部門
パルム・ドール
『トライアングル・オブ・サッドネス』リューベン・オストルンド
グランプリ
『クローズ(英題)』ルーカス・ドン
『スターズ・アット・ヌーン(英題)』クレール・ドゥニ
監督賞
パク・チャヌク『Decision to Leave(英題)』
脚本賞
タリク・サレー『ボーイ・フロム・ヘヴン(英題)』
審査員賞
『EO(英題)』イエジー・スコリモフスキ
『帰れない山(THE EIGHT MOUNTAINS)』シャルロッテ・ファンデルメールシュ、フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン
第75回記念賞
『トリ・アンド・ロキタ(英題)』ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
女優賞
ザーラ・アミール・エブラヒミ『ホーリー・スパイダー(原題)』
男優賞
ソン・ガンホ『ベイビー・ブローカー』
短編映画部門
短編パルム・ドール
『海边升起一座悬崖 (THE WATER MURMURS) 』チェン:ヂィェンイン
特別賞
『LORI (MELANCHOLY OF MY MOTHER’S LULLABIES)』 アビナッシュ・ビクラム・シャハ
ある視点部門
最高賞
『The Worst Ones』リズ・アコカ&ロマーヌ・ゲレ
審査員賞
『JOYLAND』 サイム・サディック
監督賞
アレクサンドル・ベルク 『METRONOM』
俳優賞
ヴィッキー・クリープス『CORSAGE』
アダム・ベッサ『HARKA』
脚本賞
『MEDITERRANEAN FEVER』マハ・ハジ
Coup de cœur賞
『RODÉO』ローラ・キヴォロン
カメラ・ドール作品賞
『WAR PONY』ライリー・キーオ、ジーナ・ギャメル
カメラ・ドール特別賞
早川千絵『PLAN 75』