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絶縁状態の姉弟の“根深い確執”を描く!フランスの名匠デプレシャン監督、マリオン・コティヤール×メルヴィル・プポー共演『姉弟』【カンヌ映画祭レポート】

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ライター:#まつかわゆま
絶縁状態の姉弟の“根深い確執”を描く!フランスの名匠デプレシャン監督、マリオン・コティヤール×メルヴィル・プポー共演『姉弟』【カンヌ映画祭レポート】
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「監督週間」「ある視点部門」各1回の出品に加え、7回目のコンペ選出になるアルノー・デプレシャン監督。今やカンヌを代表する常連監督の一人と言っていいだろう。今回も新作『姉弟(原題)』(2022年)を持ってカンヌ入りした。今回の主役はどちらもフランスの人気スター、マリオン・コティヤールメルヴィル・プポー。美男美女が演じる姉と弟の確執の物語である。

『姉弟(原題)』(左から)メルヴィル・プポー、アルノー・デプレシャン監督、マリオン・コティヤール(撮影:筆者)

中年を迎える三人姉弟と父母という家族。マリオンが演ずる姉アリスは俳優として舞台を中心に活躍している。プポーの演ずる弟ルイは小説家だがアリスのことを実名で書いた小説を出版し、それがきっかけで姉とは絶縁状態になっている。父母は姉を溺愛し、愛情を奪われたという思いもずっと彼を姉から遠ざける原因のひとつだ。一番下の弟は姉と兄の不仲をどうにかしたいと思い、父母との橋渡しにもなっているのだが、姉と兄はかたくなに互いを避け合っている。ある日、父母が交通事故に巻き込まれ、重傷を負い三人姉弟は顔を合わせざるを得なくなる……。

『姉弟(原題)』アルノー・デプレシャン監督(撮影:筆者)

「実は僕の家族にも、昔20歳のころ、トラブルがあって互いに絶対許さないと思っていた時期があった。その経験がこの作品を手がけるきっかけになっている。原作はあるのだけれど、オリジナルのキャラクターを加えたり、エピソードを書きかえたりしてある」
とデプレシャン監督。
「ドラマチックなストーリーやキャラクターが好きなんだな。深くうごめく家族の関係性、テンションの高い愛情問題、怒り・崩壊・運命……。そうだね、メロドラマだよ。チェーホフ的とも言われるね。チェーホフはシェイクスピアと並ぶ偉大な劇作家だと思っているんだ」

『姉弟(原題)』マリオン・コティヤール(撮影:筆者)

「ラブストーリーではあるけれど、この役は今までにない変わった役だと思う。とても荒々しくて、かたくなに拒否していて……それがだんだん愛することを知っていくのね。彼女を信奉する移民の女性に会い、彼女のためを思って関わっていくことで自分自身が変わっていくのよ。それが父母の事故で、愛する者を失うことを恐れる経験と重なって進んでいくの。
メルヴィルとは何回も共演しているし、個人的にも仲がいいので、こんな互いを拒否するような役を演ずるのは戸惑いがあったわね。撮影の時もいつもみたいにおしゃべりなどせず、距離をとるようにしたんだけれど、後で「ごめんね」って言ったわ。
アリスはかなりエキセントリックで、好かれる人間ではない役だけれどこういう役も面白いと思う。基本的に毎回違う役を演じたいと思っているの。「TAXY」シリーズのような例外はあるけれどね」
と、マリオン。

『姉弟(原題)』メルヴィル・プポー(撮影:筆者)

「たくさんの要素があって複雑に愛憎が絡み合っているけれど、ラブストーリーだよね。子どもたちのそれぞれの恋愛、長年連れ添った父母の夫婦愛、そして混乱してしまった家族愛。僕の演ずる弟はフィアンセとの関係を家族が認めないと思い、なおさら家族と距離を撮ってしまっているんだ」
と、かなりひねくれ者の弟をプポーは解釈してみせる。

デプレシャンの映画の登場人物はいつも皆どこかニューロティックで躁鬱っぽい。出演する俳優によってコメディタッチにも、シリアスにもなる。けれど、悩める登場人物たちにはいつか救いが訪れる。それが、デプレシャンの優しさ、なのではないだろうか。

 

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